「冬ソナ」から大きく変わった韓国「恋愛ドラマ」事情 「結婚じゃないハッピーエンド」を描いた3選

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 いつの時代も韓国ドラマの王道である恋愛ドラマだが、その在り方は大きく変化している。未婚人口急増の韓国ならではの新たな恋愛の形を描いた注目の3作品を紹介する。【ライター・渥美志保】

「冬ソナ」と「愛の不時着」の大きな違い

 コロナ禍とストリーミングサービスの普及により、今や世界中でその面白さが知れ渡った韓国ドラマ。ヨン様フィーバーが巻き起こった第一次韓流ブームの頃は、一部のファンだけのものという印象が強かったが、今では「1本くらいは見たことがある」という人も少なくなく、エンターテインメントの選択肢のひとつとして広く認知されているようだ。

 だがそれでも根強いのが「韓国ドラマ=イケメンと恋愛ドラマ」という思い込みだ。もちろんそういった面があることを否定する気はさらさらない。2003年頃の「冬のソナタ」の大ヒットから「愛の不時着」に始まる現在の第四次ブームまで、その中心には必ず恋愛ドラマがあった。

 注目したいのは「恋愛ドラマ」の在り方がかなり変化していることである。

 いうまでもなく、ブームを代表する上記2作品は両方とも「ハッピーエンド」だが、その在り方は、実は全く異なる。「冬ソナ」ではペ・ヨンジュン(49)とチェ・ジウ(46)演じる主人公は、記憶喪失、出生の秘密、不慮の事故などの運命のいたずらに翻弄されまくった末に、2人が再び巡り合うのはラストシーンで、もう二度と離れないという風情でドラマは幕を閉じる。

 一方の「愛不時」は、韓国と北朝鮮で離ればなれになった2人は、1年に一度だけ第三国で会う「遠距離恋愛」を続けるのだ。私生活で結婚を選んだヒョンビン(39)とソン・イェジン(40)は、ドラマの中では「もう離れない」「一緒にいてほしい」「あなたのために生きる」なんてことは決して言っていない。「(相手の国で)一緒に暮らすハッピーエンド」という発想が、最初から無いのである。

結婚しないハッピーエンドを描く「二十五、二十一」

 少し前までの韓国の恋愛ドラマにおいては、多くが「結婚」もしくは「結婚を意識した関係」をハッピーエンドとして描いていた。だが2018年に20代の未婚率が90%を超え、30代、40代の未婚人口も急増している韓国で、ドラマにおいても結婚以外のハッピーエンドが登場することは自然なことのように思える。つまり「愛していても、結婚するとは限らない」というわけだ。

 イケメン俳優ナム・ジュヒョク(28)と映画スターのキム・テリ(32)が共演した「二十五、二十一」(ネットフリックスで配信中)は、そんなドラマの典型だろう。

 ドラマはIMF通貨危機さなかの1998年を舞台に、フェンシングの国家代表を目指す女子高校生ヒドと、父の事業が失敗し一家離散の憂き目にある元大学生イジンの恋と青春を描く。

 物語はヒドの娘が母親の日記を読み進める形で進んでゆくのだが、その娘の名字から、ヒドとイジンの恋は結婚に至らなかったことが、早々に明かされている。印象的なのは9話だ。暗いトンネルを歩んでいるようだったイジンの人生は、太陽のように明るいヒドと出会うことで勇気づけられ、やがて明るい彷徨へと導かれてゆく。唯一無二の輝きを放つ2人の関係を、イジンは「愛」だと知っているのだが――2人は既存のハッピーエンドである結婚には至らない。それでいて、紆余曲折を経た2人がたどり着くラストは「ハッピーエンド」としか思えない幸福感がある。

 こうしたある意味で現代的なドラマで特徴的なのは、父親の存在がえてして希薄なことだ――つまり家父長制を連想させる存在が意図的に描かれていない。ヒドは父を失っており、夫は結局一度も出てこない。イジンの父親は事業を失敗し借金取りから逃げている存在で、彼らの友人グループの父親たちも「家父長」といった存在は見当たらない。

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