肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方4 転移のない状態でみつかっても治療成績が厳しい「膵がん」の全体像
病院の選び方は?
進藤:前述の通り、膵がんは手術だけでは難しい、しかし手術を軸に考えないと治癒が困難ながんです。したがって手術はもちろんのこと、抗がん剤治療などの経験も多い施設での治療が望ましいと思います。さらに先生のクリニックのように大学病院などとタイアップし、同じレベルの医療を提供できるようなサテライトがあるとやはり膵がんのような難治がんの患者さんの治療においては心強いですよね。
一方でIPMNやMCNなど、がん化のリスクのある疾患の診断を受けた方の場合は、定期的な経過観察をし、膵がんの早期発見・早期治療につなげるという意味で、内科・外科のエキスパートがそろった総合病院がやはり有利だとは思います。
病院にはそれぞれ役割があり、診療科にもそれぞれ役割があります。手術の上手な先生のところにいけばすべて完結ということはありません。難治がんの治療は施設の「総合力」がものをいう世界ですから、世の中のランキングなど医療の一部を切り取った数字に踊らされることなく、アクセスのしやすさ、診療実績、主治医の人となりなどから総合的に判断するのが望ましいと思います。
大場:進藤先生の言う通りで、膵がんのこれまでの不良な治療成績をみれば、いくら手術の上手な先生のもとであっても、すべて完結しないことの方がむしろ多いでしょう。一方で、治癒を願うならば手術は一発勝負ですから、手術クオリティの高い膵臓外科医の存在は大前提です。
ただし、治療成績向上のためには、抗がん剤治療が手術の前にも後にも必須であり、そこが疎かにされたり、片手間で抗がん剤治療がされたりするような施設は選ばない方が得策でしょう。加えて、膵がんの特性上、黄疸症状で発見されるケースが多く、その場合には内視鏡的に胆管にステントを留置してがんによる閉塞を解除したり、重篤な胆管炎が生じた場合には迅速にステント交換をしたりドレナージ(内に貯留した膿瘍や感染源となる体液などを外に排出させること)してくれるエキスパート胆膵内科医の存在も不可欠です。確定診断のために必要な超音波内視鏡検査(EUS)も行ってくれます。
「神の手」とメディアでもてはやされる外科医の中には、再発した途端に関心がなくなるのか、「君は外科卒業」と患者に平然と言い放つような医師もいるらしいですから、本当に主治医の人となりも大切な要素ですね。再発した場合にも責任をもって専門的なケアが行き届くような総合力が備わった病院選びをしたほうがよさそうです。
主治医の存在の有無
進藤:手術は外科、抗がん剤治療は腫瘍内科などにもちろんプロがいますから、がん専門センター病院のようなところではその時その時の治療でメインとなる診療科は変わってきます。しかし、やはり手術を受けた患者さんにとってはたとえ頻回のフォローアップではなくても、一貫して診てくれる「主治医」がいるかいないかでは大きく違うと思います。
医療の世界では医療費とかコストの問題はもちろん考えなくてはならないのですが、膵がんはやはり手術を軸に治療が進んでいくという疾患でもありますし、外科医は手術をするだけが仕事ではありませんよね。考えてみると自分が手術して10年以上も外来で診ている患者さんというのはほとんどが膵臓疾患の患者さんですね。
大場:これまでと矛盾しているような話になりますが、一貫して診続けてくれる「主治医」という存在は、リソースが充実しているハイボリュームの大きな病院ほど希薄になってしまう傾向があります。手術で頼りにしていた外科医から、再発したから外科でやるべきことは終わったので腫瘍内科へ行くようにといわれ、腫瘍内科医からは使える抗がん剤治療がなくなったから自宅近隣で緩和ケア科を探すようにといわれ……。
ようやく辿り着いた緩和ケア医からはいろいろな条件を付けられ、結局のらりくらりとかわされながら真剣に向き合ってくれない、そのような厳格な専門分業制の狭間でつらい思いをしている患者さんは少なくないような気がします。どのような治療成果を迎えた患者であっても、公平に患者と関わり続け、信頼関係を築き続けられる進藤先生のような主治医がいると患者にとっては心強いですね。
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