投手をやらされた中日「根尾昂」の現在地 評論家は「我慢して起用を続ける時期は過ぎた」

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星野仙一の“決断”

 5月24日現在、小園の今季の打撃成績は、打率2割3分4厘、ホームランは2本。だが、5月は打率3割6分2厘、ホームラン2本と大活躍を果たした。

 一方の根尾は、これまでに出場したのは18試合、33打数7安打で打率2割1分2厘という成績だ。

 立浪の背中は遥か遠く、ライバルの小園にも差を付けられている──率直に言って、今の根尾は展望が開けないという状況ではないか。

「いや、私はそうは思いません。根尾くんのポテンシャルは、立浪くんにも、小園くんにも劣りません。立浪くんには類い稀な素質がありました。だから中日も、ドラフトで1位指名しました。とはいえ、当時の星野仙一監督(1947~2018)が、どんな批判を受けても、立浪くんをルーキーの頃から1軍の試合にフル出場させた決断が何より大きかったと思います」(同・広澤氏)

 立浪の1年目は、打率2割2分3厘、本塁打は4本。2年目に至ってはケガで30試合しか出場できなかった。

 それでも星野監督は立浪を起用した。3年目の1990年、立浪は128試合に出場。打率は3割0分3厘と“打撃開眼”を果たした。

「小園くんの場合も今年、佐々岡真司監督(54)がフル出場させる英断を下しました。選手は監督に期待されると意気に感じます。更に、1軍の試合で場数を踏むと、その経験が貴重な糧となります。立浪くんと小園くんが才能を開花させた最大の理由です」(同・広澤氏)

指導者を探せ!

 ならば今からでも遅くない。根尾も1軍の公式戦にフル出場させればいいではないかと思ってしまうが、広澤氏は「もう我慢して出場させる時期は過ぎた可能性があります」と言う。

「根尾くんは中日にとって期待のルーキーでした。様々な関係者が様々なアドバイスを行い、頭の中が混乱している可能性があると思います。何が正しくて、何が間違っているのか、全く分からない状態になっているのではないでしょうか。一度すべてをリセットして、改めてイチからバッティングフォームを再構築する必要があると見ています」(同・広澤氏)

 根尾の両親は共に医師。中学までの成績はオール5で、慶應大学医学部に進学する可能性もあったことが伝えられている。

「根尾くんが非常に理知的で頭脳明晰なタイプだというのは、球界でもよく知られています。そのため彼は、理論派の打撃コーチと相性がいいはずです。プロの打者なら誰でも、コーチの『つんのめるのはダメ』とか『肩を開くな』という曖昧なアドバイスに悩まされたことがあります。そういう感覚的な指導は、特に根尾くんは合わないのではないでしょうか」(同・広澤氏)

 自分にとって最高の“師匠”をどう探すか。広澤氏は「中日というチームの中だけでなく、外にも目を向けるべき」とアドバイスする。

「人との出会いは運です。才能ある選手でも、指導者との縁がなく、球界を去ることは珍しくありません。とはいえ、じっと待っているだけなら、もっと運は遠ざかります。中日以外のOBでも、機会があるなら貪欲に教えを乞う。そうすると、『この人だ!』と思える人に巡り会える可能性は上がるはずです」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部

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