元気な高齢者は「外出自粛」をしていない? 専門家が語る「中高年の生き方」三つのタイプ

ドクター新潮 健康 長寿

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「意欲バリバリ老人」

 かような「自粛生活」の浸透で、高齢者は「三つのタイプ」に大別されるとして和田氏はこう話す。

「まず一つ目は、新しいことにチャレンジし続ける『意欲バリバリ老人』で、二つ目は日常習慣などルーティンを辛うじて続けていることで『なんとか身体機能を維持できている老人』。そして最後は、ほとんど外に出ないで巣ごもり生活を続けることで『どんどん衰えていく老人』です」

 望ましいのは「意欲バリバリ老人」であることは言うまでもないが、自らを省みた時にあなたはどのタイプに当てはまるだろうか。

 もちろん、長きにわたる自粛で活動的に過ごすなんて無理だった。そう嘆く声も聞こえてきそうだが、日々のちょっとした心構えが大切だと和田氏は語る。

「自分の体は使わなければ衰えるという、当たり前のことを実感している人は、コロナ禍でも意識的に動き、老化を予防できている。たとえば、僕の患者さんの中には、コロナ禍だからと本人ではなくご家族が薬を取りに来る方もいます。私も電話外来を始めたくらいですが、結局のところコロナを怖がって外に出なくなってしまったような方々は、この1、2年で一気にヨボヨボに老化してしまったという人が多い。他方で、意識的に外で体を動かさなければと思っている人は、きちんと外来に来る。そういう人たちは、口々に“歩けなくなると困りますから”と話していますよ」

怪我のリスクが増加

 なんとか身体機能を維持している人でも、運動量が減っていれば要注意である。

 総合内科医で秋津医院院長の秋津壽男氏によれば、

「外出を控えれば足腰が脆弱になるのは言うまでもありませんが、たとえば都内ではまん延防止期間中も、公共施設は使用禁止の措置が取られました。その影響で、体操教室など高齢者の体を動かす貴重な機会が失われてしまい、運動量も激減しています。これまでは加齢による衰えはあっても、なんとかだましだまし使えていた膝や関節などの機能が極端に低下し、結果的に高齢者が怪我するリスクは高くなっていると思います」

 となれば、身体機能に“負の連鎖”が起こる危険性もあると秋津氏は続ける。

「高齢者にとって致命的なのは歩けなくなることです。骨折がきっかけとなって自由に動けなくなれば、いずれは寝たきりの生活を余儀なくされ、人と話す機会も激減し社会性が失われていく。アメリカの医学会の報告によれば、脳にアルツハイマーの原因物質が溜まっていても、認知症を発症しない人が多数見つかったそうですが、その理由は高齢になっても社会的なつながりが非常に多かったことがあるとされています。つまりは事あるごとに人と一緒にコミュニケーションをとっている人ほど認知症になりにくいというわけですが、巣ごもり生活を続ける高齢者の中には、数日もの間、誰とも話さない人が増えており、そのリスクは上がっていると思います」(同)

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