7千通の郵便物を廃棄、プールの水出しっぱなし騒動… 「無能な労働者」ニュースを見て思うこと(中川淳一郎)

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「無能な労働者」関連のニュースが大好物です。「郵便物7千通捨てる コロナワクチン接種券も 容疑で局員の男を逮捕」(朝日新聞デジタル2022年1月18日)などですね。そして、この手のニュースに登場する主人公の供述が味わい深いんですわ。

 20歳の容疑者の男は「『配達するのが面倒だった』と容疑を認め」、「『昨年11月ごろから(郵便物を)持ち帰っていた。処分に困って雑木林に捨てた』などと話し」たそうです。

 あのさぁ……。どう考えても7千通もの郵便物、不法投棄したらバレるでしょ? 面倒くさかったのかもしれないけど、まず20歳のキミがやるべきだったのは「郵便物が多過ぎて僕には対処できません! 皆さん、なんとかしてください!」と同僚に泣きつくことだったんですよ。

 しかし、彼は「オレが無能だと思われる」「こんな量になってしまったのにこれまで黙っていたことを怒られてしまう」と考え、最善の対策として「捨てる」を選んだのでしょう。ハッキリ言いますが、ただの無能です。7千通を廃棄すれば、数字自体はリセットされますが、この中に郵便書留で現金が入っていたり、とんでもなく重要な通知が入っていてその通知がなかったことによる損害が発生するということを考えないのでしょうか。こうした「郵便局員が郵便物を捨てた」というニュースは時々登場します。その度に私は「あぁ……この男はとにかく仕事がキツかったんだな……」といった感慨を持ち、「じゃあ辞めればいいのに」と思います。

 無能な労働者は「とにかくこの一瞬を乗り切りたい」ということだけを考え、まったく後のことを考えない。郵便局を利用した人から損害賠償請求を起こされるかもしれませんし、郵便局からも何らかの形で訴えられるかもしれない。

 この手のニュースを愛する私ですが、なかなか好きなのが21年の6月23日から9月3日まで神奈川県横須賀市の公立中学校で発生したプールを巡るバカ先生の件です。この先生、新型コロナウイルス感染を防ぐために、プールの水を常に溢れさせて水質をきれいにする必要があると思い込んで水の栓を開け続け、通常の11倍の水道料金を発生させました。

 結果、横須賀市は上下水道料金の損失額約348万円の半額をこの先生と校長・教頭に87万円・43万円・43万円と請求。この先生、給水栓が開いているため止めた先生がいたのに、その後も開け続け、プールを開放しない夏休み中も栓を開け続けたのだとか。

 あのね、誰も入ってないプールの水をなんできれいにする必要があるの? それに、手足口病のウイルスを除去するための塩素剤も、水を入れ続ければ濃度が薄まってしまうでしょ?

 この先生が自宅の風呂も常にお湯を流しっぱなしにしているのであれば、この行為も理解できるのですが、多分自分の懐が痛むからそんなことはしないでしょう。「どーせ税金だからな」という判断でプールの水を流しっぱなしにしたほか、「オレ様のコロナ対策、立派だろ! 出世させてね」という気持ちもあったのでしょう。バカ労働者は頼むから無職になって家に引きこもってくれ!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年5月19日号掲載

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