4630万円誤送金事件 経験者が出金記録から分析する「田口容疑者のオンラインカジノ無間地獄」
印鑑を購入していた
現地取材でも、田口容疑者がパチンコ好きで、1日に数万円も使っていたという証言が得られている。勤務先のホームセンターから得ていた給与は約25万円。自転車操業だった可能性もある。そんな彼に突如舞い込んできた“チャンス”が、山口県阿武町が誤送金してしまった4630万円だった。
Aさんはこう強調する。
「ギャンブルの経験がない人は、彼が4630万円を天から降ってきたと考え、最初から使い果たすつもりだったと思うかもしれません。しかし、私は違うと思います。彼は、この大金を種銭にしようと思いついたのではないか。『ひとまず借りて、増やしてから返そう』と。ギャンブラーは常にギャンブルをしたくてしょうがないのですが、目的は負けることではありません。勝ってお金を増やしたい。いや、勝ってこれまでの負けを取り返したいのです」
確かに、4月8日、町の職員が誤振込みに気づいて自宅を訪れた時、田口容疑者は「風呂に入っている」と職員を待たせはしたが、最終的には銀行で組戻し作業をすることに納得し、その日のうちに阿武町から90キロも離れた宇部市の銀行支店まで職員の車で向かっている。副町長によれば、道中で彼は印鑑も購入していたという。
5000ドルから勝負は始まった
だが、片道2時間かけて行った銀行の玄関に立った時、田口容疑者は、突如、「今日は手続きしない」と翻意したのだ。そして、その日からデビットカードで、カジノ口座に金を動かし始めたのである。
最初の金額は67万8967円。1日おいて4月10日には、68万526円を2回と、125万6441円を動かした。
「海外のオンラインカジノはドルで決済するので、このような端数が出たのでしょう。彼はまず5000ドルで勝負をしたのではないでしょうか。最初から全額をマネーロンダリングするつもりだったとしたら、限度額ギリギリを出金したはずです。いつ何時、差し押さえられるかもしれない状況にあるのですから」
Aさんは、その時の田口容疑者の心理をこう読み解く。
「具体的な目標額はわかりませんが、数十万円くらい勝って浮き分を確保してから、元金を返すつもりだったのではないか。私も家の貯金や妻のクレジットカードに手をつけたことは何度もあります。最初は数万円です。でも、それが重なり、やがては一気に取り返そうとして、桁が増えていくのです」
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