若手投手が次々台頭…他球団が驚く「巨人のドラフト戦略」と桑田真澄のコーチ術

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1位指名は11連敗だが

 昨年はリーグ3連覇を逃し3位に沈んだ巨人。今年も坂本勇人など主力選手が故障で離脱し、5月に入ってから5連敗を喫するなど、ペナント奪還に向けて一進一退の戦いが続いている。しかしながら、巨人にとって明るい材料が若手投手陣の躍進だ。クローザーに定着したルーキーの大勢を筆頭に、堀田賢慎、戸田懐生、赤星優志、平内龍太、山崎伊織と、ここまで6投手がプロ初勝利をマークしている(5月17日終了時点)。【西尾典文/野球ライター】

 この6人の中で昨年までに一軍登板経験があった投手が、戸田と平内のみだったことを考えれば、いかに投手陣が大きく入れ替わっているか、よく分かる。他にも、リリーフとしてフル回転している鍬原拓也、育成ドラフト6位ルーキーで早くも一軍デビューを果たした菊地大稀、故障から復活した直江大輔も一軍の戦力となっている。

 なぜ、急にこれほど多くの若手投手が開花しているのだろうか。その背景にあるのは、やはりドラフト戦略と言えるだろう。

 巨人は昨年のドラフトまで再抽選を含めて重複となった1位指名で11連敗と狙った選手をことごとく外してきた。豊富な資金力を背景にアマチュアの好素材を抽選なしで獲得できた逆指名(希望枠、自由獲得枠含む)時代と比べれば、思うような指名ができていない。

 しかし、ここ数年は抽選を外すことが多いこともあってか、その後の方針に“一貫性”が見られるのだ。他球団のスカウトは巨人の指名について以下のように話している。

未完成でもスケールの大きい選手を狙う

「1位を抽選で外した後の指名は、多少、未完成でもスケールの大きい選手を狙っているように見えますよね。堀田や平内は、その典型例だと思います。堀田は、甲子園に出ておらず、知名度が低く、巨人が最初に指名した奥川(恭伸・ヤクルト)に比べると、完成度はかなり劣りましたが、ストレートには目を見張るものがあった。入団直後に怪我があって、いろいろと球団内部では責任問題になったようですが、他の球団も高い順位で狙っていたと思います。平内や大勢、山﨑など、アマチュア時代に怪我があっても、それを理由に指名を回避するのではなく、万全になった時のプラス面を評価していますよね。堀田の件があったのに、怪我をしていた選手をこれだけ上位で指名したのは正直驚きました」(セ・リーグ球団スカウト)

 先述した中でも、大勢、堀田、平内、鍬原の4人は“外れ1位”、もしくは“外れ外れ1位”で入団した選手である。このスカウトが話すように、大勢以外の3人は故障などで出遅れたが、現在は、プロ入り前よりもスケールアップした姿を見せている。リスクをとりながらも、各投手の長所に目を向ける方針が奏功していると言えそうだ。

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