壮絶「ハルキウ攻防戦」のその後 日本人カメラマンが見た「今も怯える市民」と「驚愕した夜の風景」

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今もシェルターで暮らす市民たち

 今になってロシア軍のヘタレ感がさまざまなメディアで取り上げられているが、開戦初期のハルキウ市の状況を経験した市民の中には、「怖いなんてもんじゃなかった」と振り返る人は多い。

 だからこそ、いまだに地下のシェルターで暮らす市民がおり、市中心部の目抜き通りのあちこちにウクライナ軍が展開して警戒しているのである。キーウよりもロシア国境のほうが近い。最近も、ハルキウの市街地から5キロの村がウクライナ軍によって解放されたが、そこからちょっと離れたロシア側陣地からは、いまだハルキウ市に向け砲撃が続く。ロシア軍が再び一点突破でハルキウ市を攻略することが無いともいえない。

 ハルキウ州政府は開戦した2月後半、市民に州外への避難を呼びかけた。いまだ市中心部に人は戻らず、開いている店も少ない。しかし郊外、特に西側に行くにつれ、段々と開いている店が出てくる。戦地なのに店の品物は思ったよりも豊富にあり、ここでの生活はあまり困らない。

電気を消して早く寝ろ!

 中心地から少し西側のホテルを宿にしたが、初日の夜10時ぐらいに部屋のドアがノックされた。出るとホテルのオーナーか管理人なのか、おばさんがちょっと怒り気味で、「部屋の電気を消してさっさと寝ろ」と言っているようだ。電気代を気にしているのかな、くらいに思いながら言う通りにして、カーテン閉めようとした時、外を見て驚いた。

 いまなお灯火管制が敷かれているのである。キーウやリヴィウでは見たことがない光景だった。全部の建物、街頭、店の看板が消され、あたり一帯が漆黒の闇に包まれている。夜10時には外出禁止と灯火管制があることを後で聞いた。ロシア軍を撃退したハルキウ市だが、今も戦争は続いている。

石井暁(いしい・あきら)
1970年生まれ。民放TV局で報道ニュースに従事した後、イラク戦争の取材を機にフリーランスジャーナリスト・カメラマンへ転身。アフガニスタン戦争、スマトラ沖地震津波、ミャンマー独立自治区紛争、タイ国軍クーデターなど、国内外問わず、戦争・紛争・災害取材を各地で続ける。

デイリー新潮編集部

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