英国防省の分析で判明「ロシア軍は東部戦線で大惨敗」“投入軍3分の1を失う”の重要な意味

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渡河作戦での“奇跡”

 一方のウクライナ軍は、2014年の“敗戦”を教訓とし、リベンジを誓って準備を重ねてきた。まさに臥薪嘗胆だ。

「ウクライナ軍の入念な準備が伺えるのが、ロシア軍によるドネツ川渡河作戦を撃退した戦果です。川を渡ろうとしたロシア軍に対し、ウクライナ軍が榴弾(りゅうだん)砲などで遠距離から激しく砲撃。ロシア軍を複数回にわたり“壊滅”させたと言われています」(同・軍事ジャーナリスト)

 この戦果は「渡河中のロシア軍が全滅…ウクライナの攻撃で戦車70台、兵力1000人を喪失」(朝鮮日報:5月14日)などと報じられた。まさにウクライナ軍の圧勝だが、本来なら簡単にできることではないという。

 ウクライナ軍は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国から榴弾砲の供与を受けている。高い性能を持っているのは間違いない。

 とはいえ、自分たちがロシア軍から反撃されないよう、榴弾砲は目標から40キロ程度の距離を確保する必要がある。渡河ポイントは遠く、そこを集中砲撃することは簡単ではない。

 戦果を見れば、ウクライナ軍が「不可能を可能にした」ことが分かる。だが、一体、どんな方法を使ったのだろうか?

イーロン・マスクの“援軍”

「2014年、ロシアはクリミア自治共和国に軍事侵攻し、親ウクライナ政権を転覆してしまいました。クリミア半島を奪われたウクライナは、自国にもロシア軍が攻めてくると予測していたに違いありません。軍の専門家なら、渡河ポイントは誰でも同じ場所を選びます。ウクライナ軍はロシア軍が渡河しそうな地点を調査し、付近の地形を3Dデジタル化していた可能性があります」(同・軍事ジャーナリスト)

 デジタル化しておけば、砲撃に必要な座標を簡単に割り出せる。ロシア軍の渡河作戦をキャッチし、榴弾砲を急送したとして、最短時間で発射が可能になる。

「この場合、榴弾砲を1箇所に集めるわけにはいきません。ロシア軍が反撃する可能性があるので分散させます。一方、弾着ポイントには、砲弾を同時着弾させる必要があります。ばらばらに砲弾が飛んできても、ロシア軍は避けやすい。集中砲撃するからこそ、戦果が挙げられるわけです。ところが、榴弾砲の設置場所は分散されていますから、ポイントへの距離はそれぞれ異なります。この状況で集中砲撃を行うことは、本来なら大変なことなのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 距離が違えば、着弾に必要な時間も異なる。何時何分何秒に、どの砲から撃てばいいのか、非常に複雑な計算が必要だ。

「現実は、ロシア軍の動きをアメリカの軍事衛星がキャッチし、現場をドローンで偵察。急送された榴弾砲はデジタルデータを使って座標を割り出し、テスラのイーロン・マスク氏(50)が提供してくれた衛星回線を使って、各榴弾砲が連携。コンピューターで砲撃の手順を瞬時に計算し、一斉砲撃を実現したのだと考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)

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