英国防省の分析で判明「ロシア軍は東部戦線で大惨敗」“投入軍3分の1を失う”の重要な意味

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ハイブリッド戦

 なぜ、ここまでの戦果を挙げることができたのか。理由は「ロシア軍の慢心」と「ウクライナ軍の準備」だという。

「2014年、ロシア軍はウクライナ南部にあるクリミア自治共和国に軍事侵攻しました。この際、ロシア軍が“ハイブリッド戦”によって勝利したと、多くの軍事関係者が注目したのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ハイブリッド戦とは、正規軍同士の戦闘だけでなく、ゲリラ戦、サイバー戦、情報戦など、とにかくありとあらゆるものを活用して敵軍を撃破するという軍事戦略を指す。

「原点は1999年、中国の人民解放軍が示した『超限戦』という軍事戦略でした。まともに戦っても、人民解放軍は米軍に勝てない。勝つためには単純な軍事力だけでなく、政治、経済、宗教など、使えるものは何でも“兵器化”すべきだという概念でした」(同・軍事ジャーナリスト)

 本来は、敵国に宣戦布告し、正規軍を侵攻させ、敵軍を撃破するのが戦争だ。一方のハイブリッド戦は、ネットによるフェイクニュースや敵国に住む自国民の武装勢力など、活用できるものは何でも使う。

ロシア軍の慢心と油断

「2013年、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長(66)が、ハイブリッド戦を積極利用すべきという論文を発表しました。そして翌14年にクリミア危機が勃発すると、ロシアはハイブリッド戦の概念通り、フェイクニュースを撒き散らしたり、政治的圧力を加えたり、親ロシア派の住民にデモを実施させたりと、まさにありとあらゆる手段を講じました」(同・軍事ジャーナリスト)

 そしてロシア軍は、クリミア人民共和国へ電撃的に侵攻し、親ロシア派の政権を樹立することに成功した。

 他国を手中に収めながら、軍としての被害はゼロ。世界中の軍事関係者が、この“戦果”に注目したのは当然だと言える。

「この戦果が仇となりました。ロシア軍はウクライナに対しても同じハイブリッド戦を仕掛けますが、慢心し、油断していたため、敵軍の実力を軽視した。『2、3日で片が付く』と言わんばかりの杜撰な作戦計画で進軍しました。その結果、手ひどい反撃を受けているのはご存知の通りです。太平洋戦争に当てはめれば、クリミア侵攻が真珠湾奇襲、ウクライナ侵攻がミッドウェー海戦に位置づけられるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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