泥棒を“あだ名”で呼ぶ深いワケを元刑事が解説 「レインマン」「スパイダーマン」で逮捕率アップ?
プロの泥棒は日本に3000人
兵庫県警が今月16日に窃盗容疑などで逮捕したのは、「レインマン」の異名を取る無職の男(38)だった。空き家に侵入して現金を盗んだ疑いが持たれるが、県警が捜査線上に浮上したこの男を調べると、なぜか「雨が降る晩によく出かける」ことが分かり、このあだ名で呼ばれていたという。
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「空き巣が雨の日を狙うのはそれほど珍しいことではありません。空き巣は侵入時の“音”に敏感なので、雨音にかき消される状況は好都合なんです。また、雨が降っていると住宅街の人通りも少なく、傘を差していれば顔もばれにくい。ゲソコン(足跡)も残りづらいですからね」
そう語るのは、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏だ。神奈川県警の元刑事である小川氏は、所轄の盗犯係や警察本部の捜査3課などで、主に窃盗事件の捜査に携わってきた、いわゆる「ドロ刑(泥棒刑事)」である。
「あだ名がつく泥棒はプロばかり。窃盗を生業にしている“窃盗常習者”です。沈んでいる(“刑務所に入っている”という意味の隠語)者を含めると、日本で活動している窃盗常習者はおよそ3000人にのぼります。彼らはひとりにつき数十件から数百件の余罪があるといっても過言ではありません」
“高所侵入”のスパイダーマン
なかでも、「余罪が3ケタ以上になると、あだ名で呼ばれるようになる」(小川氏)という。今回、逮捕された「レインマン」はアカデミー賞を獲得した名画にちなんだようだが、小川氏によれば、他にも映画から名付けられたあだ名はあるそうだ。
「たとえば、“スパイダーマン”と呼ばれる男がいました。空き巣のなかでも“高所侵入”を得意とするタイプです。マンションでは1階や2階が空き巣に狙われやすいのですが、スパイダーマンは身軽な動きを武器に高層階ばかりをターゲットにしていました。10階建ての高層マンションでは、まず非常階段やエレベーターで屋上に向かい、屋上の外壁に懸垂のような格好でぶら下がったり、ロープを使って狙いを定めた部屋のベランダに飛び移るわけです。10階建てマンションの屋上は地上から30メートル以上の高さなので、足を踏み外したら一巻の終わりです。にもかかわらず、この男はベランダから隣のベランダに、10階から9階の部屋へと自由自在に動き回っていました」
ヒーローとは程遠い存在だが、その姿はまさに“スパイダーマン”と言えるだろう。
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