落合博満が不意を突かれた“あり得ないプレー”…忘れがたき「痛恨のボーンヘッド」

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走者不在の一塁にけん制球

 4月26日の日本ハム対楽天で、日本ハムの投手・北山亘基が、バントシフトで一塁手が前進した直後、お留守になった一塁にうっかりけん制球を投げてしまう痛恨の珍プレーが見られた。「プロ野球ではあり得ないプレー」と思ったファンも多いはずだが、過去にも同様のチョンボが何度か演じられている。【久保田龍雄/ライター】

 一塁に走者がいる状況でけん制球を投げた北山に対し、走者がいない一塁にけん制球を投げてしまったのが、中日時代の小島弘務である。1992年8月15日の阪神戦、まさかのアクシデントが起きたのは、0対1とリードされた3回だった。

 この回、阪神の先頭打者・木戸克彦が三塁ゴロエラーで出塁し、前原博之の一塁悪送球の間に二塁を陥れた。ところが、小島は木戸が二進したことに気づかなかったのか、次打者・湯舟敏郎のときに、走者不在の一塁にけん制球を投げてしまう。

 ファースト・落合博満が不意をつかれながらも、慌てて体勢を立て直してキャッチしたが、ボークが宣告され(野球規則6.02a)、木戸は三塁へ。直後、湯舟はセンターにフライを打ち上げ、投手の犠飛というダブル珍事で2点目をプレゼントする羽目になった。

 これには、現役時代に通算10勝を挙げた中日・江崎照雄スコアラーも「(走者のいない一塁にけん制)こんなプレーは記憶にない」と目を白黒させるばかりだった。

前進守備という不運

 ゴロを処理した投手が野手のいない二塁に送球し、野選が記録される珍事が起きたのが、2016年5月13日の巨人対ヤクルトである。

 1対1で迎えた延長12回に無死一、三塁のピンチを迎えた巨人・高橋由伸監督は、山口鉄也に代えて田原誠次をリリーフに送った。田原は畠山和洋を三振に打ち取り、1死一、三塁から大引啓次も併殺コースの投ゴロに打ち取った。

 田原はすぐさま二塁に送球したが、内野陣がバックホーム体制で前進守備を敷き、二塁に誰も入っていなかったのが不運だった。

 ボールがセンターに転がる間に三塁走者・飯原誉士がホームイン。珍しい形で野選が記録された。痛恨のボーンヘッドに、田原は「投ゴロが来た瞬間、ゲッツーと思ってしまった。(自軍の守備位置を)見ていなかったので、確認しなかった自分のミス」とうなだれた。

 これで負けていたら、大きな悔いを残すところだったが、1点を追う巨人はその裏、2死から長野久義の二塁打と四球で一、二塁のチャンスをつくり、坂本勇人が左越えに逆転サヨナラ二塁打。結果的に田原はミスが帳消しになったばかりでなく、勝利投手になってしまうのだから、野球は、最後の最後まで本当にわからない。

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