ウクライナ戦争で中国は“ロシア寄り”で金欠状態 政府系メディアにも異変の危機感

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ロシア事業に及び腰の中国企業

 海外への資金流出の加速化は、昨年後半から不調に陥っている中国の不動産市場に甚大な影響を与えることになる。

 中国の民間調査会社によれば、4月30日から5日間の労働節連休中の新築住宅販売は面積ベースで前年に比べて33%減少し、不動産企業上位100社の1~4月の販売実績は半減したという。

 中国政府はてこ入れ策を講じているが、その効果はあらわれておらず、不動産企業の資金繰りは悪化するばかりだ。中でも深刻なのは海外で発行したドル建て債券の償還だ。「海外の債権者は不利な扱いを受けている」との不満が高まっている中、ロシア関連の地政学リスクが意識されれば、中国の不動産企業のデフォルトが相次ぎ、不動産バブル崩壊はますます現実味を帯びてくるのではないだろうか。

「欧米企業が撤退したロシア市場を中国企業が席巻する」との見立てもあったが、実際には逆の動きとなっている。

 割安となったロシア産原油を「爆買い」しているインドとは対照的に、中国の石油企業はロシア産原油の調達に慎重だ。欧米企業が相次いで手放したロシアの原油や天然ガスの権益の獲得にも積極的ではない。中国のテクノロジー企業もひそかにロシア事業から撤退している(5月6日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 中国企業がロシア事業に及び腰になっているのは米国の制裁が怖いからだ。米国が構築した国際金融システムの恩恵を最も享受してきた中国企業は、今や米国を始めとする海外マネー抜きには経営が成り立たなくなっている。

「ロシア寄り」とみなされることのデメリットが顕在化したことで、中国政府のスタンスは徐々に変わりつつある。政権中枢で異論が続出していることを反映してか、政府系のメデイアは5月に入り「ウクライナ寄り」の記事を配信し始めている。

 楽観的過ぎるかもしれないが、筆者は「ロシア軍のウクライナでの苦戦を目の当たりにした中国軍は肝を冷やし、今後軍事活動に慎重になるのではないか」と考えている。

 繰り返し主張してきたことだが、ウクライナ危機の本質は冷戦終結以降の国際秩序が崩壊してしまうことにある。「誰が勝者になるか」というレベルの問題ではない。一刻も早い停戦が何より求められている。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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