巨人の投手がポケットに妙なモノを入れて…「選手と審判」で起きた3つのトラブル

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「言った」「言わない」の押し問答

 ところが、オリックス・レオン監督は「代打・進藤とは告げていない」と主張し、猛抗議。審判団と「言った」「言わない」の押し問答となり、試合は6分中断してしまう。

 結局、「レオン監督とアイコンタクトを取った」と言う佐藤球審に押し切られる形で、進藤が打席に立ち、二ゴロに倒れた。試合はオリックスがサヨナラ勝ちしたものの、レオン監督は「あの場面は、必ず投手を代えてくると思ったから、待っていた。アイコンタクトなんかしていない。代打を出すときは、ベンチ前のグラウンドに足をかけて、バッターを指差し、名前を告げている」と試合後も怒りが冷めやらなかった。

 一方、佐藤球審は「名前をしっかり確認しなかった僕のミスです。アイコンタクトと思ってしまったんですが、日本ハムの投手交代を戻すわけにもいかないので、代打・進藤で試合を再開してもらいました」ときまりが悪そうだった。オリックス側は「選手交代の主導権を審判が握るのは、信じられないケース」として、連盟に要望書を提出している。

投球のたびにポケットを触るので

 ポケットの中の“異物”をめぐって、審判と投手が口論になる騒ぎが起きたのが、15年8月7日の巨人対広島だ。0対0の延長12回に無死一塁と予断の許せない局面を迎えた巨人・原辰徳監督は、マシソンに代えて、山口鉄也をマウンドに送った。

 だが、山口は犠打と四球、安打で1死満塁とピンチを広げたあと、菊池涼介、丸佳浩に連続タイムリーを浴び、2点を勝ち越されてしまう。

 思わぬアクシデントが起きたのは、直後だった。深谷篤二塁塁審がマウンドに歩み寄ると、山口のズボンの後ろポケットを指差し、「何が入っているのか?」と尋ねたことがきっかけだった。投球のたびに、山口がポケットを触っていたので、不審に思い、不正投球と疑われないよう、説明を求めたのだ。

 ところが、山口はポケットに“何か”を入れていることは認めたものの、「本来物を入れてはいけない。出しなさい」という深谷塁審の言葉に激高。「出しなさい」「嫌だ」の言い争いになったため、ショート・坂本勇人が慌てて仲裁に駆けつけた。続いて原監督もベンチを飛び出したが、審判団から事情説明を受けると、興奮状態で続投は無理と判断したのか、宮国椋丞への交代を告げた。

 この間、場内には一切説明がなされなかったので、スタンドのファンは何が起きたのか、さっぱりわからなかった。その後、山口がポケットに入れていたのは、お守りの数珠と判明する。深谷審判の問いかけに「数珠です」と答えたのに、うまく伝わらず、不毛の押し問答になってしまったのだという。

 原因は些細なことでも、ボタンをひとつ掛け違えただけで、感情的なドタバタ劇になってしまうのは、野球の世界でも一緒。コミュニケーションの大切さを改めて痛感させられる。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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