亡き妻に合わせる顔がない… 41歳男性が陥った“許されざる”不倫関係の核心部分

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娘が生まれ、幸せの絶頂だったが…

 雅斗さんが27歳、3歳年上の友里さんが30歳になる年に結婚。1年後には長女が産まれた。友里さんは出産から1年ほどで職場に復帰した。

「僕も妻も競って早く帰っていました。娘がかわいくてたまらなかった。3年くらい休職したいと言ったら友里に笑われましたが。そんな状態だったから家族3人、本当に仲良しでした。友里とケンカしたこともなかったと思います。彼女は何があっても笑いに代えてしまう。僕は若干、神経質なところがあるんですが、友里がすべて笑い飛ばしてくれる」

 そんな友里さんが突然倒れたのは、雅斗さんが34歳のとき。娘はまだ6歳だった。病院に行くと「膵臓がんで余命3ヶ月」を宣告される。そんなことがあるはずはない。セカンドオピニオンもサードオピニオンも受けたが、結果は同じだった。

「友里は自分ががんであることを医者から聞き出していました。そして最後まで自分らしく生きたいと、会社を辞めて娘のために生きると決めたんです。僕も非常事態だからと会社に相談、よほどのことがない限り残業は免除してもらいました。今だったらリモートワークという手もあったんでしょうけど、あのころはまだそういう発想がなかった」

 家族の時間がほしかった。週末はレンタカーを借りて、友里さんと娘をあちこちに連れて行った。だがそんなことができたのも最初の1ヶ月ほど。ある日、友里さんは再度入院し、そのまま帰らぬ人となった。37歳だった。

「本気で後を追おうと思いました。いっそ娘も一緒に……と。だけど僕の母や妹一家、友人やら先輩やらが毎日、家にやって来るんです。みんなで話し合ってシフトを組んでいた。それだけ僕の様子が危なかったんでしょうね」

 1ヶ月たってようやく会社に行けるようになった。それでもときどきいても立ってもいられない気持ちになり、トイレにこもって泣いた。半年後、娘が小学校に入学すると、その姿を見られなかった友里さんの気持ちを思って、また泣き続けた。

「娘のために生きていかなければと思えるようになったのは三回忌を過ぎたころです。あの2年間はどうやって過ごしていたのか、今でも思い出せないくらい。娘だけはきちんと育てなければと思っていたけど、育ててくれたのは母や友人たちでした。三回忌のあと夢に友里が出てきたんです。『いいかげん、しっかりしなさい。ほら、笑って』と言われた。ガバッと起きたとき、友里が本当に近くにいるような気がしました。友里の物にはいっさい手をつけていなかったんですが、それを機に、持ち物の整理を始めました」

 そして雅斗さんは友里さんの過去の秘密を知ってしまう。

親の借金返済のため…

 友里さんは独身時代からこまめに日記をつけていた。それを読むことには抵抗があったが、「一生かけて友里のことを知っていくつもりだったのに、あっけなく逝かれてしまったから、せめて日記で友里を理解したい」と思って目を通すことにしたという。

「考えたら、僕は20代のころ友里が何をしていたのか、どんな生活を送っていたのかほとんど知らないんです。紹介してもらった友だちも、友里の勤務先の人ばかりで学生時代の友人はいなかった。大学を卒業してからいくつか転職したとは聞いたけど、何をしていたのか……」

 日記を読み進めていくうちに雅斗さんは頭がクラクラしていった。友里さんの20代はかなり壮絶な日々だったのだ。

「友里のお父さんは、彼女が学生時代に亡くなったと聞きました。それは確認できた。友里が20歳のときに病死している。お父さんは小さな会社を経営したんですが、かなりの借金があった。相続放棄をすればよかったのに、お母さんがよくわかっていなくてしなかったんですね。それで借金を背負ってしまった。下には高校生の弟もいる。そこで友里は水商売や風俗で働き始めた。その過程では、すべて嫌になってホストに入れあげ、貯金をすっからかんに使い果たしたこともあった。それでもまたゼロから貯金をして、結局、6年かかって父親の借金を返し、弟の大学の費用も出した。彼女自身は大学を中退したようですね。そんなことは全然知らなかったので衝撃でした」

 そしてそれをずっと見守ってくれたのが、親友の彰子さんとその夫だった。友里さんは日記で何度も「彰子のダンナさんは恩人」と書いている。だが雅斗さんは彰子さんという名前にまったく記憶がない。友里さんは「生涯の親友」の名を雅斗さんに明かすことはなかったのだ。

「友里の携帯電話にも手をつけていませんでしたが、初めて触りました。契約解除もしていなかったんです。そこから彰子さんを探しだし、会う約束をとりつけました」

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