「ウクライナが日本に感謝を示さない」と怒る日本人の心理 識者は「今後も同じ議論起こる」

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国際貢献はお礼目当てか?

 そもそもウクライナの人々にとって、日本は「地球の裏側」と言っていいほど遠い国だ。

「CNNで被害を訴えるウクライナ人の多くは、白い肌に青い目です。同じ外見の人々は西欧にもアメリカにも大勢います。白人が多数派を占める国であっても、ウクライナとは言葉も宗教も違います。とはいえ、ウクライナの人々にとって日本のようなアジア圏に位置する国家は、ヨーロッパ圏の他国とは比べものにならないほどの“異国”でしょう。ウクライナの人々がヨーロッパの国々に対して精神的な“近さ”を感じ、日本には“遠さ”を感じたとしても無理はありません」(同・佐瀨氏)

 どこの国に感謝を表明するか──この問題に直面したウクライナの人々が、ヨーロッパ諸国を優先し、アジアの日本を“失念”していたとしても、ある意味では仕方ないという。

 それに日本人だって、ウクライナのことをよく知っているわけではない。

「国際貢献というものは、対象国からお礼を言ってもらうために行うものでしょうか? だとしたら、あまりにもカッコ悪いでしょう。本当なら『それでは男らしくない』と言いたいのですが、男らしさや女らしさという言葉は、最近では使ってはいけないと言われるので、止めておきます(笑)」(同・佐瀨氏)

「Show the FLAG」

 佐瀨氏は「私は『ウクライナは戦争中だし、遠い国だからお礼は必要ない』と言っているわけではありません。近い国でも同じです」と言う。

「平和で距離も近いアジアの国々に支援を行ったが、礼を言ってもらえなかった。こんな場合でも、私はそれでいいではないかと思います。そのため、日本人が支援の内容を議論することも、本来なら必要ないと考えています」

 だが、日本人は常に支援の内容を議論してきた。特に「資金援助だけでいいのか、軍事支援も必要ではないのか」との論点は、国を二分するほどの激論が繰り広げられたこともあった。

 1990年の湾岸戦争では、日本は総額130億ドルの資金支援を行ったにもかかわらず、クエートの感謝リストには入っていなかった。

 日本は「顔の見える支援」が必要だと判断し、1992年には国際平和協力法に基づく国際連合平和維持活動(PKO)として、自衛隊がカンボジアに派遣された。

 2001年にアメリカ同時多発テロが発生すると、当時、国務副長官を務めていたリチャード・アーミテージ氏(77)が日本に「Show the FLAG」と迫ったとの報道が大きく取り上げられた。

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