〈ちむどんどん〉もしや兄妹に秘密あり?沖縄編がパッとしなかった理由を探る

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暢子のキャラも…

 第2に暢子のキャラ設定とエピソードにも違和感をおぼえた。

 まずタイトルの「ちむどんどん(胸と心が高鳴る)」を暢子がやたら口にすること。数えてみたところ、第24回までに11回言った。ハマっていない場面もあったから、なんだか暢子が可哀想になった。

 舞台となっている県北部で行われた「北部産業まつり」のヤング大会にもよく分からない点があった。ヤング大会とは5つの高校の料理部が参加し、料理の評判を競うものである。第19話、第20話で描かれた。

 暢子が助っ人になった山原高料理部は「やんばるソバ」を出品。ライバルの南山原高は「さんぴん茶の葉の蒸しケーキ」を出した。

 これを食べに行った暢子は「おいしい!」と表情を輝かせたものの、すぐに「甘いばかりで勿体ない」とダメ出し。塩を足したらより美味しくなると助言した。

 これ、言われた側は気分を害しますよね? 高3でこんなこと言うだろうか。

「やんばるソバ」は好評だったが、大会の途中で出店ブースを不利な場所に変えられてしまう。南山原高の保護者側の策略だった。おまけに山原高は部員が汁の入ったズンドウをひっくり返してしまい、ソバがつくれなくなる。

 ここで暢子はひらめく。汁の要らない「やんばるナポリタン」をつくるのだ。これが大好評で優勝に輝く。

 けれど気になったのはメニューの変更。「それ、アリなの?」。出店ブースを強引に変えさせるのは明らかにインチキだが、メニュー変更はルールに反しないのだろうか。それがOKなら、不評な料理は変えてしまえば良いことになる。

 暢子は優勝スピーチを託され、来場者に向かって、「東京に行って料理人になりたい!」と宣言した。これも高3が人前で声高に言うかなぁ。会場には前田の口利きで就職が内定していた内間食品の人事課長もいた。「あれ?」だったのではないか。

 心配なのは3姉妹の中で一番、賢秀に似ているのは暢子だということ。ともに運動神経抜群なのは良いが、2人ともお調子者で強引なところがある。

 ひょっとしたら、兄妹4人の中で血縁があるのは賢秀と暢子だけなのではないか、とも思っている。優子が困っている人をほうっておけず、賢三はやさしいからだ。

 第5話で優子はまだ生きていた賢三に対し意味深なことを言っている。

「いつか(子供たちに)話してやらんとね。昔のこと」

 おそらく2人には壮絶な過去があるのだろう。

 これまでに朝ドラは2度、沖縄を舞台にした。「ちゅらさん」(2001年度前期)と「純と愛」(2012年度)である。どちらも貧困や米軍基地などシリアスな問題には踏み込まなかった。

 今回は物語の最中、米軍機の飛行音がたびたび入る。「10・10空襲」も早々と登場した。踏み込んだ話も出てくるはずだ。

 暢子は上京後、まず賢三が横浜市鶴見区の闇市で料理人をしていた当時の暮らしを知るだろう。賢三が自分の名前入り包丁を持っていた理由も分かるはず。沖縄が米軍統治下の時代に本土で過ごしたのだから、並大抵ではない苦労をしたに違いない。

 暢子が上京し、東京編が始まった。立志編、青春第2幕でもある。やはり、いよいよ見逃せなくなった。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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