専門家が施設よりも「在宅死」を推す理由 自宅改造にかかる費用、排泄トラブル解決術は?

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「死が隠されている」問題

 まず、一番分かりやすいメリットはコストです。例えば、施設に入るとなると場合によっては何千万円というお金が必要になるのと比べて、自宅で介護保険サービスを利用するほうが明らかに安く済みます。

 次に、おじいちゃんやおばあちゃんが自宅で老いていく姿を小さい子どもたちが目の当たりにする経験は、貴重な教育的な機会になるはずです。高齢者にとっては、家族に逝き方を見せることが最後の使命であるともいえるのではないでしょうか。そもそも、在宅死が少なくなり、「死が隠されている」こと自体が、私たちから逝き方を考える機会を奪っているようにも思えるのです。

 さらに、自宅での看取りには病院や施設では期待できない充実感が得られると思います。何よりも本人の希望をかなえてあげられますし、面会時間が決められているわけでもないので、ゆったりとした時間の中で看取ることができます。もちろん、心身が衰えた高齢者と自宅で一緒に過ごす時間が増えればトラブルも増えるでしょう。それを引き受ける覚悟は必要不可欠です。しかし、それをどう乗り越えたかも含めて、故人を思い出す時の充実感につながると思うのです。

無知の幸せ

 トラブルの代表的な例としては、排尿・排便の不始末や徘徊が挙げられます。しかし、こうしたトラブルは、施設や病院でも起きることなのです。悪い言い方をすれば、施設や病院に預けることで、そうしたトラブル処理を押し付け、私たちは見ないふりをしているに過ぎない。いわば「無知の幸せ」です。知らないことの幸せも否定すべきではありませんが、病院や施設に入れたからといって、トラブル自体がなくなるわけではないことを忘れてはいけません。子どもが迷子になるように、高齢者は徘徊するもの。そう捉えて、家族が過度に負担を感じることなく、また社会全体も自然なこととして受け入れていく必要があると思います。

施設は「入るのは簡単でも出るのは難しい」

 では、実際に自宅で看取るために必要なことは何でしょうか。

 何よりも大事なのは、本人と家族の決断です。トラブルは必ず起こるだろう。それでもなお、私たちは在宅死・自宅での看取りを選ぶのだという強い覚悟です。一度、病院や施設に入ってサービスを享受してしまうと、現実的にはそこからなかなか抜け出せなくなってしまいます。入るのは簡単でも出るのは難しい。入居してみて気に入らなかったから出たいと思っても、新たな行き場所がないなんてこともあり得ます。ですから、もちろん救急搬送などは別ですが、自宅をついのすみかにしたいのであれば、安易に病院や施設に頼ろうとせず、「うちは自宅で看取ることに決めた」という強い意志を持つことが大事になってきます。

 したがって、施設に入るのか、自宅で最期を迎えるのか悩んでいるのだとしたら、絶対に施設に相談に行ってはいけません。

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