〈鎌倉殿の13人〉天才で傲慢な“モンスター”「菅田義経」の斬新さ

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過去、数々演じられてきた義経

 冒頭で触れたように、義経が戦の天才であるのは、いわばパブリック・イメージであり、例えばこれまでに放送された歴代大河ドラマにおいても、それは踏襲されてきた。

 1966年放送の「源義経」では尾上菊之助(現在の菊五郎)が主人公義経を演じ、1972年の「新・平家物語」では志垣太郎が、1979年の「草燃える」では国広富之、1993年の「炎立つ」では野村宏伸、2005年の「義経」では滝沢秀明、2012年の「平清盛」では神木隆之介が、それぞれ義経を引き継いできた。

 みな、同時代を代表するような美少年・青年であり、戦の天才として義経を演じている。しかし、あくまでも義経は善意の人であり、多少は天才ゆえの性格の偏りはあったにせよ、悪漢として描かれることはなかった。いくつか印象的な例を挙げよう。

 国広富之の義経は、父の仇である平清盛が病死したことを知り、御家人たちが喚起する姿を見て激怒する。

「だから言ったじゃないか! 早く平家を攻めろと。もう父の敵を討つことはできないんだぞ。兄上はそう思わないのですか!」

 実に子どもっぽい。当然、御家人たちは鼻白み、頼朝も不快の色を浮かべる。国広義経は、戦の天才ではあるが、いったん戦場を離れればまったくの政治音痴で世間知らず、純粋で無知な青年として描かれているのだ。石坂浩二演じる頼朝は、義経に悪意がないことを知りながらも、その無知につけこまれて法皇や朝廷に利用されてしまうことに憤り、「あのバカが」とまで呼ばわった。純粋で一途で、そして幼稚。義経像の一つの類型と言えるだろう。

「青年」の滝沢義経

 滝沢秀明が演じる義経は、アクションシーンが印象的だった。さすがジャニーズだけあり、その若々しく躍動感あふれる義経は、やはり従来の義経像の一面を強調したものと思われる。一方で、この「義経」では、父の仇である清盛が、義経の父であり師でもあるという役割を与えられていた。義経の母・常盤御前は、軍記物の『平家物語』などによれば、義経の父・源義朝が平治の乱で命を落としたあと、清盛の妾となったという。もちろん史実かどうかは定かではないが、事実だとすれば、義経にとって清盛は義理の父とも言える間柄ということにもなる。

 大河「義経」では、清盛を憎みながらも父として、そして優れた政治家として尊敬の念を抱くという義経の複雑な心境を描いていた。滝沢義経は、「青年の煩悶」を抱える武将だった。

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