専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化

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うつ、男性ホルモンの減少は急にやってくる

 一方、がん検診などに対しては、70代、80代なら、それほど神経質にならなくていいと思います。

 コロナ禍でがん検診の受診者が減り、がんが見すごされた結果、今後は進行したがん患者が増える、といわれます。若い人はそれが命とりにもなりかねません。しかし70代、80代は自覚症状がないがんを放置しても、一般に5年程度は問題ありません。がんが見つかっても、手術で切りとったあとで体力がガクッと落ちる人が多いのが現実です。

 がんも、肝臓病や腎臓病も、突然悪化するものではありません。一方、うつや男性ホルモンの減少は、いずれも急に襲ってくるので注意が必要です。食欲の低下や、夜に何度も目が覚めるという症状が出て、半年も続くようなら、疑ってください。うつが疑われれば心療内科を受診するといいし、男性ホルモンの量は泌尿器科で測ってもらうことができます。

 いずれにしても、コロナ禍の2年余り、開き直って好きなようにすごした人のほうが健康で、頭もしっかりしているのは、厳然たる事実です。だからこそ、これまでは家にこもっていた人も、ここからは外に出てほしいのです。

 ウイルスに対する免疫力を高める方法として、ワクチンだけに焦点が当てられていますが、本当は自分の免疫を上げることも同じくらい大切です。インフルエンザのワクチンを打つときは、自分の免疫の大切さも説明されていたのに、コロナ禍では自粛させるためか、だれもそれを言わなくなってしまいました。

 いまこそ目覚めて、外に出て免疫力を高め、健康長寿を実現しようではありませんか。

和田秀樹(わだひでき)
精神科医(老年医学)。1960年大阪生まれ。東京大学医学部卒。和田秀樹こころと体のクリニック院長、国際医療福祉大学大学院特任教授。高齢者専門の精神科医として30年以上、高齢者医療の現場に携わっている。『「人生100年」老年格差 超高齢社会の生き抜き方』(詩想社)など著書多数。

週刊新潮 2022年5月5・12日号掲載

特集「反響続々! 高齢者6千人超を診た専門医が提唱 GWこそ差をつける好機 『満身創痍の70代』をから『快活な80代』になる休日の楽しみ方』」より

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