専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化
栄養よりもおいしさ、楽しさが大切
料理の話が出たついでに、食事への心構えについて述べておきます。
70代、80代は栄養を考えるよりも、おいしくて楽しめるほうが大事です。高齢になると味の感度が落ちて、若いときより、甘いものやしょっぱいものが好きになる傾向があります。甘いものを食べるのが至福の時間だという人は、遠慮せずに食べたほうがいいです。幸せを感じることは、脳や免疫力に与える影響が大きいからです。
強いて言うなら、いままでより肉やタンパク質を多めにとりましょう。健康長寿で知られる地域は沖縄も、ハワイの日系人も、肉をよく食べています。ちなみに1日あたりの肉の平均摂取量は、日本人の約80グラムに対し、沖縄が約100グラム、ハワイの日系人が約120グラム。アメリカは約300グラム、ヨーロッパは約220グラムで、食べすぎなので150~200グラムに減らすのが目標とされていますが、日本人は逆に150グラム程度にまで増やす余地があります。
欧米の発想にならってコレステロールや脂肪が目の敵にされていますが、そもそも日本では摂取量が少ないので問題ありません。それどころか、コレステロールは免疫機能の維持に欠かせません。脂肪も体の材料になるうえ、免疫細胞を活性化させ、肌のみずみずしさを維持するためにも欠かせないものです。
食事の量を減らさないように注意
また、精がつくといわれる食べ物は、実際、栄養価が高いです。カキやニンニクは亜鉛を多くふくみ、うなぎはビタミンEが豊富です。可能ならしょっちゅう食べるくらいがよく、うなぎは土用丑の日、と決める必要はありません。
食事の量は、いまより減らさないように心がけてください。量が減るとどうしても栄養不足気味になります。加えて、しっかり食べるのを夜から昼にシフトしたほうがいいでしょう。肝臓は昼のほうが元気なのです。外食する場合もランチのほうが経済的ですし、70代、80代は昼からワインを飲んでも問題ない人が多いのではないでしょうか。
健康観察を始めるのもいいでしょう。たとえば脳ドックですが、日本では誤解があります。よく、認知症の早期発見のために、といわれますが、年をとればだれでも脳の萎縮は避けられません。脳ドックを受けて縮んだ脳にがっかりするなら、むしろ逆効果です。
くも膜下出血を予防するために、動脈瘤ができていないかどうかを調べる。これが脳ドックの正しい目的です。つまり急死を避けるために受けるのです。心臓ドックも同様で、冠動脈の狭窄が見つかれば、バルーンを入れて冠動脈を広げる治療を受けられ、やはり突然死を防げます。
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