専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化
頭を使う、幸せを感じる
出かけなくても、家でできる健康法もある――。そんなふうに考える人もいるでしょう。たしかに家での体操など、しないよりはいいと思いますが、運動器具を購入するよりも外を歩くほうが効果的です。
とはいえ、外出しっぱなしとはいきません。もちろん家での過ごし方も、認知症を予防できるか、進行を遅らせられるかに関係してきます。前頭葉を刺激して意欲を高めることが大切で、そのためには二つ、できることがあります。
一つは頭を使い続けることです。仕事をしている人は、可能なかぎりやめずに続けること。そして本を読むこと、人と議論することです。なにもしないと脳の老化は確実に進みます。
もう一つは、いまできていることを減らさない、ということです。料理をしている人は、やめずに作り続け、オタクのように取り組める対象がある人も、やめてはいけません。自動車の運転も、安易にやめないでください。運転が好きなら自動車旅行もいいでしょう。そうすれば、運転の腕も落ちにくくなります。
ネットフリックス、アマゾンプライムも有効活用して
認知症の予防には、意欲を高めることのほかには、楽しいことをすることが挙げられます。運転好きの自動車旅行は、その点でも効果的です。電車の旅が好きな人にとっては、各駅停車に乗ってのんびり旅行ができるのは、この年代の特権ではないでしょうか。
ただ、高齢になればなるほど、前頭葉は弱い刺激では反応しなくなるので、質の高い刺激を受けやすい環境づくりも大切になります。「ネットフリックス」や「アマゾンプライム」などに加入して、質の高い映画を自宅で観られるようにしておくのもいいでしょう。好きな時間に楽しみが得られます。
男性が家事を分担するのがいい、ということがいわれます。しかし、これも善しあしで、料理や掃除をしてみて楽しめるなら、ぜひ習慣にしてください。しかし、いやいやながら引き受けるのでは労働になってしまい、かえってストレスにつながりかねません。
料理を楽しめるなら、もう少し辛い味にしたらどうだろう、などと試すと、前頭葉が刺激されます。男女にかかわらず毎日料理を作っている人も、こうした意識をもつといいです。
特に女性の場合、「家庭の味」「おふくろの味」などと期待されがちですが、そういう枠にとらわれないほうがいいです。また高齢になったら、塩分や油を控えるよりも、おいしいものを作って食べたほうが、むしろ健康につながると強調しておきます。
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