専門医が「高齢者こそ外出を」と語る理由 「行ったことのない場所」への旅行で前頭葉を活性化
行ったことのない近場
私は最近、初めて宮古島に行きましたが、美しさが違いました。また、子供のころ以来、久々に兵庫県の城崎に行きましたが、歩くのが楽しい町でした。そうした非日常的な体験が前頭葉への刺激になるのです。
一方、ルーティンの仕事は、前頭葉をあまり刺激しません。たとえば数学の難問を解いても、前頭葉の活性化には、さほどつながりません。それよりは将棋や麻雀のほうが効果を期待できます。なぜなら、相手が自分の期待通りの手を打ってこないからです。つまり、これまで経験していないこと、予測不能なことに対処してこそ、前頭葉は刺激されるのです。
たとえば「ギンザ シックス」など新しめの複合商業施設に行くのもいいでしょう。自分の気持ちが浮き立ち、思わずなにかを買ってしまう。そんな場所に足を運んでみてください。
東京都民なら、西側に住んでいる人はあまり東側を訪れず、東側に住んでいる人は西側を訪れない、という傾向があるように感じます。だから行ったことがない近場を訪ねてもいい。いざ出かけてしまえば、自然と歩きます。地方在住の方がよく「自動車でしか移動しないから足腰が弱る」と言いますが、あれは違います。いったんショッピングセンターを訪れれば、そのなかを歩くものなのです。
怖がって外出しない害
日帰りの外出をふくめ、旅先では散歩が苦になりません。どこかに出かけたほうが、間違いなく普段より歩きます。だから出かけることが大切なのです。
また、歩くのに適した町があると感じます。たとえば私は近年、愛媛県の松山がお気に入りです。あそこは市電が巡らされているので、町中にある城も温泉も、市電に乗って訪れることができます。ほかにも広島や熊本など、市電がある町は歩きやすいと思います。もちろん、バスを使っても構いません。
出かけた先では、ランチを食べる場所を探すのも楽しみのひとつです。その際、知らない店にフラッと入って、初めての状況に身を置いたほうが、前頭葉は刺激されます。
ここまで読んで、「やっぱりコロナが怖い」と感じる人もいるかもしれないので、その気持ちをどうやって払ったらいいか、あらためて述べておきましょう。
いまも毎日、コロナによる死者数が報じられますが、実際には、もともと弱っていた人が持病を悪化させて亡くなっているケースが多く、オミクロン株自体が原因で亡くなる人は、ほとんどいないのが実情です。私自身、多くの高齢者に接して、少なくともオミクロン株になってから、元気だった人がコロナで急に亡くなったというケースは、私の病院ではまったくありません。報道とリアルは違うのです。怖がって外に出ないことの害のほうが大きい。それに気付いてください。
次ページ:コロナで亡くなる確率と、外出を避けて要介護になる確率
[2/6ページ]