完全試合が相次ぐ「投高打低」の異常事態 謎を解くキーワードは「打撃革命」
メジャーは「飛ばないボール」、それでは日本は?
今季のNPBは「投高打低」が鮮明だ。ロッテの佐々木朗希は4月10日のオリックス戦で完全試合を達成。続く17日の日本ハム戦でも8回までパーフェクトと快投を続けた。5月に入っても、6日に中日の大野雄大が阪神を相手に9回まで走者を一人も出さなかった。11日にはソフトバンクの東浜巨が西武戦でノーヒットノーランを達成。あまりに投手が優位な怪現象に、現場関係者は困惑を隠さない。【津浦集/スポーツライター】
***
【写真】佐々木朗希を受け止める18歳捕手・松川のスゴさ 「佐々木のフォークはプロでも捕球が難しい」
東浜の快挙の半日ほど前、MLBでもエンゼルスのリード・デトマーズ投手がノーヒットノーランを演じた。大谷翔平も今季は投手としての成績が際立っている。ただ、MLBには明確な因果関係が存在するようだ。MLB関係者は、「昨季から軽く、軟らかい低反発球を導入したため打球の飛距離が落ちた。昨季の公式戦では、2020年までの公式球と入れ替えながら開催していたが、今季は開幕から全て低反発球になっている」と事情を説明する。
MLBでは昨季、継投を含めて史上最多9度のノーヒットノーランが誕生した。今季もデトマーズのほかメッツが継投で達成している。
「大谷の打球を見ていても、フェンス直撃のあと少しでホームランという当たりが多い。低反発球と無関係ではないだろう」(同)
「フライボール革命」の副作用
一方でNPBはどうか。強打者が次々に海を渡ったわけではなく、強力な外国人投手が続々と来日しているわけでもない。極端に投打のバランスが崩れたとは言えない中、春先は投手の仕上がりが打者に先行するのが定説とはいえ、11日現在、パ・リーグではオリックス、ロッテがいずれもチーム打率2割6厘、日本ハムと西武は2割2分台と低迷。他方、投手の個人成績では、オリックスの山岡泰輔の0.89を筆頭に、防御率1点台までの投手が実に7人もいる。
NPB監督経験者は、「ここまで極端な“投高打低”は記憶にない。パ・リーグはDH制があるので本来は打者有利のはずだが……」と珍事に首をかしげるばかりだ。
果たして、NPBの投手優位な状況にはどのような背景があるのか。
セ・リーグ球団のスコアラーは、「トラックマン(軍事技術を転用したレーダーによる弾道測定器)が普及し、投球のスピン量や回転軸の分析を基にした練習で技術が進化している。ただ、解析技術の進化で恩恵を受けるのは打者も同じ。大リーグでは、アッパースイングでホームランを狙う『フライボール革命』もその成果だった」と言いながら、はっとわれに返った。
「もしかして、フライボール革命の副作用が出ているのではないだろうか?」
[1/2ページ]