英米で再評価の「江戸川乱歩」「横溝正史」 なぜ今「エログロ」が必要とされるのか
満を持して登場した明智小五郎
和製シャーロック・ホームズの異名をいただく「半七捕物帳」が人気を博したのは、半七の見事な推理力よりも、犯罪の動機となった共感できる人間ドラマや当時失われつつあった江戸情緒・風俗がノスタルジックに語られていたからでした。
そんな昔ながらの文学風土を大震災並みに大きく揺るがしたのが乱歩の「二銭銅貨」であり、それに続く先ほどあげた作品、および前年の本震の余震のごとき、1924年に「新青年」に掲載された「二癈人」(6月号)と「双生児」(10月号)です。
そして満を持して、西欧型モダニズムの典型とでも称すべきキャラクターが1925年に誕生します。いわゆる暇をもてあそぶ“高等遊民”の青年明智小五郎です。初のお目見えは、やはり「新青年」誌上での「D坂の殺人事件」(1月増刊号)。
探偵と考現学者のシンクロ
関東大震災後に登場した新しい学問に今(こん)和次郎の考現学があります。人類の残した文化や遺物・遺跡を研究する学問は考古学ですが、その現代版――今そこにある社会現象や世相・風俗を記録して考察するのが考現学です。乱歩の探偵と和次郎の考現学者がシンクロするかのように出現してきたのが面白い。どちらも異常なまでの細かな観察と尾行追跡を手法とし、物的証拠を収集し分類して考察します。そこから普段は隠れていて見えないもの、当たり前と思われているものの異相が明るみに出されます。
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