子どもに「体育座り」はかわいそう?我慢は必要? “廃止”の中学校長が語る真意
学校の慣習を変えるのは大変
そもそも、“体育座り廃止”の必要性を感じていない学校は多いはずだと矢田部校長は言う。
「多少痛くとも、生徒が体育座りをするのが当たり前だと考えている先生がほとんどでしょう。長く続いてきた学校の慣習を変えるのは大変ですし、私自身も10年前には体育座りをしている姿を見ても、特に何とも思いませんでしたから。ただ一方で、短い時間ならまだしも、長時間、体育座りをしながら集中して話を聞き続けることは難しいと思います。それでもさせるというのは、辛くても姿勢を正してじっとさせることを強制する、精神鍛錬の意味合いもあるのではないでしょうか。ですが、学校だから生徒に無理をさせても仕方ないというのはおかしいでしょう。それに、大人には体育座りさせないですよね」
とはいえ、豊北中でも体育座りの“完全廃止”には至っていないそうだ。
「運動場に集まる時は、今でも体育座りをする場合があります。外ではジャージや体操服姿なので、体育座りをする負担は軽いのではないかと思いますし、状況に応じて足を崩してもいいことになっています。『そんなことより、校長の話を短くしろ』というのは、ネットで言われていましたね。時間の面でも生徒の負担を軽くする必要があるのは前提として、校長としては、集会は全校生徒に直接メッセージを伝えられる大事な場でもあるんです。現在、全校生徒が体育館に集まる機会は、生徒会活動などを含め月に1回程度ありますが、たいてい授業1コマ分の時間より短く終わります」
現在の2、3年生は、体育座りからパイプ椅子への移行期を経験している。生徒たちはその変化をどう感じているのだろうか。
「『生徒たちは喜んでいますか?』と取材でよく聞かれるんですが、直接聞いたことはないですね。まさか校長が発案したものだとも知らないでしょう。集会では、集中して話を聞くことこそが大事なんですから、体育座りで無理をしながら聞く必要がないということが当たり前になってくれればそれで十分です」
ちなみに、矢田部校長は“体育座り廃止”と並行して、女子の制服にスラックスを導入した。なかなか革新的な校長なのである。