肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方2 「名医ランキング」の功罪と病院の選び方

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医師と患者の関係の根底にあるもの

進藤:そうですね。手術というのはある程度手順が決まっているものですから、一定の経験を積んでいる外科医であればそこまで成績に差はないというのが真実です。一方で臨床のポリシーやスタイルは医師ごとに大きな違いがありますので、難治がんの「克服」をゴールとして考えた場合、手術を完遂することだけではなく、その先まで見据えた治療戦略をどう考えるかによって患者さんの運命が決まってしまうことはあり得ます。

 患者さんの立場に立てば有名な医師に執刀してほしい、名医に執刀してほしいという気持ちにはなるのは自然だと思いますが、がんの治療は治るとしても長丁場であり、手術をすれば終わりではありません。その医師を信頼し、一緒に病と闘っていきたいと思えるかどうか、そちらの方がはるかに重要です。ランキング本というのはあくまで病院選びの参考となる一定の目安を示しているに過ぎず、主治医の選び方は、実際に会って話してみて、その先生に自分の命を本当に任せられると思うかどうか。そこが最も重要なポイントだと私は思います。

 いつも一般向けの講演などでは話すのですが、医師と患者の関係の根底にあるものは「信頼」に他なりません。肩書や数字が治療をするわけではないし、大場先生も元は外科医ですから同じだと思いますが、外科医であれば誰でも自分の患者さんには最高の手術をしたいと思うわけです。その自信と覚悟がなければ執刀医としての資格はありませんし、そういう医者に会えるかどうか、そういう医者と信頼関係を構築できるかどうかが本当の「患者力」だと私は思います。

大場:「がんの治療は治るとしても長丁場であり、手術をすれば終わりではない」――。まさにその通り。テレビドラマで人気の天才外科医・大門未知子のように、失敗しない「神の手」など虚像であることがよくわかります。この対談企画が進藤先生のいう患者力を養うための一助になればよいですね。

大場大 おおば・まさる
1999年 金沢大学医学部卒業、2008年 医学博士。2021年より東京目白クリニック (豊島区) 院長。2009年-2011年 がん研有明病院。2011年-2015年 東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。2019年より順天堂大学医学部附属順天堂医院肝胆膵外科 非常勤講師も兼任。専門は、外科学、腫瘍内科学、消化器病学全般。書籍・メディア掲載も多数。

進藤潤一 しんどう・じゅんいち
2004年 東京大学医学部卒業、2012年 医学博士。2014年より虎の門病院消化器外科 (肝・胆・膵)所属。2011年-2012年 米国MDアンダーソンがんセンター腫瘍外科。2013-2014年、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。専門は、肝胆膵外科学、腫瘍外科学。特に肝臓外科領域の研究業績では世界の若きリーダー。医師向けの教育講演も国内外で多数。

デイリー新潮編集部

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