肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方2 「名医ランキング」の功罪と病院の選び方

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便頼みの大腸がん検診の問題

大場:現場で闘っている優れた外科医は、目の前にいる患者さんにベストを尽くすことを最優先としていますよね。数の調査方法に対する疑義もありますが、進藤先生の話をかみ砕いて説明すると、例えば、肝臓に転移しやすい大腸がんの場合、転移した大腸がんが「肝がん」として扱われているケースが少なくないということでしょう。膵がんが肺に転移した患者さんと話をしていると、それを肺がんと解釈しているのと同様な話です。大腸がんが肝臓に転移した場合の「転移性肝がん」については、重要なテーマとして別の機会に詳細を議論したいと思います。

 現在、大腸がんの罹患数は、国内で年間15万人以上、全体で1位となっています。また、女性の場合、死因の1位のがんであることがあまり認識されていません。欧米先進諸国との比較では、75歳未満で年齢調整をした死亡率をみると日本がトップであることもあまり知られていません (第75回がん対策推進協議会「がん対策の年齢調整死亡率・罹患率に及ぼす影響に関する研究」資料より)。

 私のクリニックの患者さんをみていても、胃カメラ (内視鏡検査) はやるけど、大腸カメラはやったことがないという方がたくさんいます。正直、大腸カメラは医師によって検査スキルの格差が大きいため、対策型の検診としてできない事情もあるのでしょう。個人的には、便頼みの検診ではなく積極的に大腸カメラを勧めています。検査中、がん化リスクのあるポリープ (腺腫)があればその場で切除してしまう。早期のうちに発見・解決したほうがよいに決まっているのに、公の対策ではそこまでカバーできないから、どうしても進行した状態で発見されやすい。

 胃がんや食道がんとは異なり、進行したステージⅢの大腸がんでも10年生存率は70%を越えており、予後が比較的良い疾患だといえます。にもかかわらず、死亡数が年次推移でみると増え続けているのはなぜか。鍵は、転移しやすい臓器が肝臓であること、ステージIVでも治るチャンスがあるのに、治療戦略が病院、医師によって大きな格差があることが挙げられます。
少し長くなってしまいましたが、話を元に戻しましょう。では具体的にどうやって外科医の腕の差をしらべればよいのでしょうか。

進藤:手術件数が多いということは、それだけ施設の経験数が多いということになりますので一定の臨床のクオリティは担保されます。しかし、難しい症例を多数扱っているのか、簡単な手術を多数やっているだけなのかによって手術の質は全く異なってきますし、それは一般の方々にはアクセスできない情報です。

 外科医の技量の担保という意味では、肝・胆・膵外科という領域の場合、日本肝胆膵外科学会が認定している「肝胆膵外科高度技能専門医」資格を有しているかどうかは一つの目安になります。これは外科専門医、消化器外科専門医のさらに上の3段目に相当する資格であり、難治性であることの多い肝・胆・膵領域がんに対して要求される定型的な手術を、一定のクオリティで執刀できるかどうか厳しい評価基準で審査されるものです。

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