松本白鸚インタビュー なぜ高熱の日に最高の演技ができたのか
休みの日は粗大ゴミみたいなもの
結局、キホーテのこのせりふそのままに、舞台上で役を勤めるだけでなく、僕自身がキホーテのように生きてきたということになるのだと思います。それは苦しいことでもある。しかし同時に、艱難(かんなん)も含め、人生は全て込みで面白いものだと思うんです。ですから、今年の8月で80歳になりますが、自分は今、人生がだんだんと楽しくなっている只中にいます。
そんな僕を見てきた家内はこう言います。
「あってるんじゃない」
つまり「ラ・マンチャの男」や「勧進帳」をやって疲れて帰ってはくるけれどいつもより元気だそうです。でも、休みの日は粗大ゴミみたいなものです。
僕からすればそれが当たり前だと思っていたら、どうも世間ではそうではなく、逆なのだという。3歳で初舞台を踏んでから、世間の非常識を常識とする芸の世界で生きてきましたから。結局、僕は妻から常識を学び、妻に非常識を教えたということになりますね。
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