松本白鸚インタビュー なぜ高熱の日に最高の演技ができたのか

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 継続は力なりと言う。しかし、続ける力こそ才能であり、我ら大衆にはそれがなかなかかなわない……。初演から実に53年、「ラ・マンチャの男」で主役を張り続けてきた松本白鸚氏(79)。ファイナル公演を終えた「継続の天才」が、自らの原点と生き方を語り明かす。

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〈「50年以上やってきたんで、作品のテーマと俳優・白鸚の生き方が一緒になっちゃったんですよね」

 ミュージカル「ラ・マンチャの男」。1969年の日本初演以来、松本白鸚氏は50年超にわたって主演の大役を果たし続けてきた。

 劇中の代表曲「見果てぬ夢」に象徴されるように、狂気の如く夢を追い求めるドン・キホーテ、そして作者のセルバンテス、さらには田舎郷士のアロンソ・キハーナと、ひとり3役を演じ分けてきた。

 そのファイナル公演が幕を閉じたのは今年2月。総公演回数、実に1314回。同じ俳優が単独主演を続けたミュージカルの日本最多記録を誇る。

 昨年末、ファイナル公演に臨むにあたっての制作発表会見で冒頭の感慨を語った白鸚氏は、こう続けた。

「無事終えると、もぬけの殻でしょうね」

 実際にファイナル公演を終えた白鸚氏の胸中やいかに。〉

「続ける」とは考えない

 みなさんに、「どうやったら50年以上も続けられるんですか。秘訣を教えてください」ですとか、「いよいよファイナルですね」とか、よく仰(おっしゃ)っていただくんですが、実は僕自身は「続ける」、あるいは「ファイナル」などと考えたことがない。歌舞伎には「一世一代」という言葉がありますが、僕にとってはその日、その時の舞台が常に等しく愛おしいものであって、ファイナルだから一世一代の芝居を、という発想がないんです。

 毎回の舞台を必死に勤め上げ、帰ったら家内とさけの切り身とあったかいごはんを食べたらそれで満足。どんなに大変であっても、どれだけ疲れていても引きずらない。つまり、「続ける」などと考えずに、その日の舞台に専念することだけに集中する。余計なことを考えないできたことが、結果的に続けてこられた秘訣といえば秘訣なのでしょうか。

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