間宮祥太朗「ナンバMG5」にも三原則…なぜヤンキードラマや映画が人気なのか
ナンバMG5を参照すると
「ナンバMG5」に照らし合わせて考えてみたい。「友情」は白百合高校に通う主人公・難破剛(間宮祥太朗)と市松高校・伍代直樹(神尾楓珠)の間に芽生えた。第1話だった。
剛は実際にはゴリゴリのヤンキーなのだが、それを隠している。直樹はそれに協力してくれている。2人はワルたちとのケンカでも連携するようになる。
次に「努力」。ヤンキー一家に生まれ育った剛は普通の青春を過ごしたいという気持ちを家族に伝えることができず、時と状況に合わせて特攻服と学ランとを着替える。涙ぐましい努力を重ねる。バカバカしい話だが、努力は観る側を惹き付けるのだ。
「勝利」は分かりやすく描かれている。剛はケンカで連戦連勝。第2話では市松高2年の番格(番長クラス、念のため)をパンチ2発で倒した。無敵だ。
「ナンバMG5」の視聴率は悪くない。世帯視聴率しか記さないとミスリードを招くが、各局が重視するコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)を見ると、5月4日放送分の第3話は2.7%。同時間帯でぶつかる「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(日本テレビ)は2.1%だから、上回っている。
どちらの作品も高齢者はまず見ない。この2つの作品に限ると、フジも日テレもコア視聴率しか気にしていないと言って良いので、フジはしたり顔だろう。
ちなみに5月2日放送の「恋なんて、本気でやってどうするの?」(フジ)のコア視聴率は1.3%。翌3日放送の「持続可能な恋ですか」(TBS)は同2.0%である(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
フジは放送前から、「ナンバMG5」のターゲットは若い視聴者と宣言していたから、狙い通りなのである。
ヤンキー作品の第1号は
ヤンキー作品の第1号は何かというと、仲村トオル(56)と清水宏次朗(57)が主人公のトオルとヒロシに扮した映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)にほかならない。その後の作品に強い影響を与えた。
2人は劣等生で女性にモテなかったが、底抜けに明るく、なによりケンカが滅法強かった。
ただし暴力を使うのは「自分の身を守る時」と「仲間を助ける時」のみ。その後のヤンキーの主人公のお手本となった。
また2人の髪型はリーゼント。やはり、ヤンキー作品の源流となった。
この映画以前にも谷隼人(72)が主人公の不良高校生・氷室洋二に扮した映画「ワルシリーズ」などがあったが、ヤンキー映画とは呼べなかった。大人の男性向けで、若い男性の支持は集まりにくかったからである。
内容が重く暗かったためだ。主人公がヤクザを叩きのめしたり、学ランで賭場に出入りしたり。最後は少年刑務所に入るので、大半の若い男性はドン引きした。
「ビーバップ」以降のヤンキー作品には青春の香りが漂うものの、それ以前の不良映画は血なまぐさかったのだ。
近藤真彦(57)が主演した映画「ハイティーン・ブギ」(1982年)の主人公・藤丸翔も暴走族のリーダーだが、これもヤンキー作品とは言えない。武田久美子(53)扮する宮下桃子との恋愛模様が中心だったからだ。ヤンキー風味のあるラブストーリーだった。
ちなみ翔と桃子は同棲し、子供ができるが、翔の父親が仲を引き裂く。やがて翔はバンドをつくり、コンテストで優勝し、再会した2人は海辺で抱き合う。なんだか韓流ドラマのような物語だった。
その後、ヤンキー作品はこう進化していった。
映画「湘南爆走族」(1987年)。暴走族の内幕をかなりリアルに描いた。
主演はほぼ新人だった江口洋介(54)。湘南爆走族の2代目リーダー・江口洋助に扮した。名前の読みが同じだったのは奇跡的な偶然である。
江口のバイクはGS400(スズキ)の改造車。髪型は紫色に染めたリーゼントで、服装は白い特攻服だった。ヤンキー作品に改造車、特攻服が初めて登場した。
洋助の相棒で親衛隊長の石川晃役にオーディションで選ばれたのは織田裕二(54)。これがデビュー作だった。ちなみに親衛隊長とはリーダーの護衛役で族のナンバー2である。
TBS「池袋ウエストゲートパーク」(2000年)。主人公は高卒後にフリーターとなったマコト。長瀬智也(43)が演じた。
マコト自身はワルではないものの、周囲は窪塚洋介(42)が扮したタカシらコテコテの不良ばかり。敵対するグループとの抗争に明け暮れた。
リーゼントや特攻服は登場しない。みんなお洒落だった。タカシらのグループも暴走族ではなく、カラーギャング集団だった。
映画「クローズZERO」(2007年)。主人公の高校生・滝谷源治を小栗旬(39)が演じた。ヤンキーばかりの高校に転校してきたヤクザの息子・源治が、校内制圧を目指す物語だった。
源治の髪型はツーブロックで襟足を長く伸ばしていた。リーゼントはヤンキー作品からほぼ消えた。
日本テレビ「今日から俺は!!」(2018年)。主人公の高校生・三橋貴志を演じたのは賀来賢人(32)。
貴志は金髪のパーマヘアーだったが、設定が1980年代前半だったため、リーゼントヘアーも登場した。男女関係も描かれ、ケンカ以外のヤンキーの日常も描かれた。当時のあまり怖くないヤンキーの実像が描かれた。
今後、街からヤンキーが完全に消えようが、ヤンキー作品は生き続ける。「友情」「努力」「勝利」に惹かれる若い男性がいる限り。
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