「知床遊覧船」事故、強欲社長が「逮捕されない」可能性 元船長が明かす “重大な過失”

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周囲に“逮捕はない”と語っているとの情報も

 北海道・知床沖で観光船「KAZU I(カズ・ワン)」が沈没した事故から2週間余り。海上保安庁は運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)と、今なお行方不明の豊田徳幸船長(54)に対し、業務上過失致死容疑ですでに捜査に乗り出してはいる。だが数々の責任を負うべき社長の逮捕は、困難という見方が強い。

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 現在のところ、桂田社長は行動を制限されている様子もない。

「海保も遊んでいるわけではないんです。運航会社を家宅捜索していますし、社長にも事情聴取を始めている。ただ、立件は簡単ではありません。特に問題となるのが、社長に事故を予見できたのかという点。そのことを立証する証拠を集めるのは容易ではないと見られます」

 と解説するのは社会部記者。こうした事情を社長本人も把握しているのか、

「自身が海上運送法の違反のみを問われ、書類送検にとどまることもあり得ると見ているのでしょうか、周囲に対して“逮捕はない”と語っているとの話も漏れ伝わってきます」(同)

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士もこう語る。

「海で起きる海難事故は、車の衝突事故と違って痕跡が残りにくい。たとえば船と船が衝突したとしても、どこでぶつかったのか位置を特定することすら困難で、陸の事故に比べ、そもそも捜査が難しいという事情があります」

調査が入るときだけバラストを船に戻し…

 かつて「知床遊覧船」で勤務した経験のある元船長は、事件前から明らかになっていた重大な問題を指摘する。

「KAZU Iは船体前方にエンジンが積まれていて、バランスをとるためのバラスト、要は“重り”の砂袋を船尾に積まなきゃいけない。なのに、豊田は操船しづらいなどと言って、そのバラストを勝手に下ろしてしまっていたんです」

 KAZU Iからの救助要請は“船首が浸水し、エンジンも使えない”というものだった。つまり、“バラスト下ろし”が事故の一因になった可能性もあるのだ。

 元船長は桂田社長に、砂袋を下ろすのを止めさせるように忠告していた、とも語る。

「だけど、社長がおざなりな注意しかしないから。豊田も改めようとしなかった。仕方がないので、昨年夏ごろ、自分は何度も国交省の運輸局とJCI(日本小型船舶検査機構)に通報して、会社に監査に入ってくれと頼んだんですよ」

 ところが、JCIの仕事はずさんだった。検査や監査の際に、対象の事業者に事前通告してしまう。JCIの職員が来る時だけバラストを船に戻し、検査が終わると重りを下ろす、というイタチごっこになっていたというのだ。

 すでにKAZU Iとの連絡手段の不備については社長も認めているところだが、それ以外にも重大な過失があったわけだ。5月11日発売の「週刊新潮」では、無理な操業を招いた要因と推察される桂田社長の金銭事情などとあわせ、事件について詳しく報じる。

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