【知床観光船事故】「KAZU I」船体捜索と引き揚げ費用で強欲社長にいくら請求すべきか
桂田社長の責任は?
山田教授の推測によると、引き揚げに必要な費用は5億円程度と考えられるという。
「調査の費用は8億7700万円と発表されました。引き揚げそのものの費用は、調査費用より安くなるはずです。一方で『KAZU I』の引き揚げは、通常の作業より細心の注意が求められます。船体をなるべく傷つけずにサルベージする必要があるからです。そうしたことを考えると、船内調査と引き揚げ作業で、合計して10億円台という予算規模になるのではないでしょうか」
船体の引き上げは、「事故の再発防止」という観点からも極めて重要だ。
「沈没の原因を科学的に調査するためには、船体そのものを調べる必要があります。どうしてこのような事故が起きてしまったのか原因を分析し、後世に伝えていくことこそが最も効果的な再発防止策であることは言うまでもありません」(同・山田教授)
SNSなどのネット世論を見てみると、多くの投稿者は引き揚げそのものには理解を示している。
だが、「桂田社長に費用を請求すべきではないか」という声は根強い。
「強欲社長を援助するのか!?」の異論
「桂田社長の運営がどれほど杜撰で、安全性を無視したものだったか、これまでに様々な問題点が明らかになっています。そのためSNSでは、『船内調査や引き揚げ作業に関する資金負担が、“免除”されることは絶対に止めてほしい』という投稿は相当な数に上っています。特に『ホテルや旅館といった会社の財産、私有財産を全て処分して充当し、その残金を税金で補填すべき』という意見が目立ちます」(前出の記者)
山田教授も「そうした世論に、私も一定の理解はできます」と言う。
「税金を使って問題のある経営者を援助しているように見える納税者の方もいるでしょう。ただ、高速道路に大破して交通の邪魔になっている車があれば、とりあえず道路の管理者がレッカー移動させないと事故処理も運転手の責任追及も先に進みません。経営者がどういう形で金銭的な負担を行うかは後でしっかり考えるとして、今は国が主導で調査と引き揚げを進めるというのは、やはり合理的なスキームだと思います」
註:観光船引き揚げ 国主導 業過致死容疑 運航会社を捜索(読売新聞・5月3日朝刊)
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