女子大生ライター・佐々木チワワ “ホスト狂い”のキッカケとなった男との出会いを語る

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痛いくらい幸せな思い出

 久しぶりに訪れた店はきらびやかになっていて、1年前には売れてなかった子も売れていた。彼の打ち立てた売り上げの数字が時の流れを感じさせた。変わらない笑顔で「久しぶりだな!」と笑う彼と、何度も何度も乾杯をした。

 唐突に店内に流れる音楽。私が何度も聞いて、何度もかみしめた歌詞。

「やっぱ俺たちといえばこれでしょ。今でも覚えてるし、あれが俺の歌舞伎町で初めてのラストソングだったの。それはずっと忘れない」

 そんな言葉とともに記念のサプライズシャンパンと、小さな金のネックレスをもらった。

 あれから4年近くが経った今、私は別のホストの隣にいて、歌舞伎町という街からいまだに抜け出せていない。悔しいけど、売れっ子になった彼は街に立つ大きな看板から、口角を上げて私のことを見つめてくる。

 私に歌舞伎町の価値観を教えてくれた彼。思い返すと、痛いくらい幸せな思い出ばかりだ。「アイネクライネ」を聞くたびに、私は2018年の夏にタイムスリップした気持ちになる。

佐々木チワワ(ささき・ちわわ)
2000年生まれ。慶應義塾大学在学中。10代から歌舞伎町に出入りし、「歌舞伎町の社会学」を研究。著書に『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』。

デイリー新潮編集部

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