女子大生ライター・佐々木チワワ “ホスト狂い”のキッカケとなった男との出会いを語る

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初めて指名したホスト

 慶應義塾大学で「歌舞伎町の社会学」を研究し、昨年には『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』を上梓した現役女子大生ライターの佐々木チワワさん。「夜の街」に精通する彼女が、自身のホスト遊びの基礎を作ったひとりの男との出会いをつづった。

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 歌舞伎町のホストクラブでは、毎日うそのような甘い言葉が飛び交う。そこに行けば(お金で買った)居心地のいい場所が用意されていて、自分が全肯定され、イケメンが楽しませてくれる。

 そんな街に18歳で足を踏み入れた私が深みにはまるまでには、数カ月の時間がかかった。

 初めて指名したホストは良くも悪くも普通のカッコイイ男の子で、わざわざシャンパンを入れる価値なんて感じなかった。

 毎日来る営業に耐え切れず彼の連絡先をブロックした後、バーで一目ぼれしてSNSで連絡を取り、指名したホストがいる。最初の子とはかけ離れた歌舞伎町らしいメークと、歌舞伎町らしくない過去を持つ男だった。

気持ちが「使える金額」を上回って…

 私のホスト遊びの基礎を作ったのは彼だった。彼の与えてくれる言葉と世界は、いつも私を喜ばせてくれた。私も彼に喜んでほしくて、初めてのシャンパンを入れた。

 店に鳴り響く音楽。キャストに囲まれてマイクを握る高揚感。隣で嬉しそうにする彼。その日は運が良くて、店で一番売り上げたホストが客の横で歌を歌う「ラストソング」という権利を手に入れた。彼が選んだ曲は米津玄師の「アイネクライネ」。歌が馬鹿みたいにうまくて、録画して毎晩寝る前に再生してしまうくらいには好きだった。

 あの日、ホストクラブという場所でお金を使う楽しさを知った私は、どんどんその沼に溺れていった。歌舞伎町のルールも知らないままのめりこんで、痛々しくもなっていった。私の彼への気持ちが、私が使える金額を上回って、そこからもう一歩頑張れなくて彼から離れた。あたしは意気地がなかった。

 初めて店に足を運んでからちょうど1年後、彼から急に連絡が来て、「1年記念日だからおいでよ」と呼ばれた。思えばいつでも「会いたい」「好きだよ」なんてうそじゃなくて、「おいでよ」「楽しませるよ」とできることしか決して口にしない彼だった。そんなホストがこの街には多くないことを知ったのは、彼の傍を離れてからだった。

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