浮気され「精神的殺人」と許さない妻、やまない尋問に疲弊する夫 “負のループ”に陥った夫婦の行方は?
夫に浮気された妻は、どこまでも深く傷ついてしまう。一方、夫は「謝ったし許してもらったはずなのに、どうしていつまでも暗い顔しか見せないのか」とだんだん妻に苛立っていく。そしてそのあげく、逃げ場を求めてまたも不倫。こうなると希望の光は見えない。無限のネガティブループに迷い込んでいく。【亀山早苗/フリーライター】
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4年ほど前、ある会合で知人に紹介され、深田誠司さん(48歳・仮名=以下同)と亜樹さん(46歳)夫妻に出会った。その数日後、誠司さんから話したいことがあると連絡があった。
当時44歳だった誠司さんは「2年ほどつきあっていた女性の存在が妻にバレて、日々、修羅場なんです」と語った。数日前の会合はふたりともお世話になった方の主宰だったため一緒に顔を出したが、「毎日、何時間も妻から責められている」とげっそりとした表情で話すのが印象的だった。
「妻は毎日毎日、同じことを聞いてくるんです。『彼女のどこが好きだったの?』『ベッドであなたは彼女にどんなことをしたの?』『私のことは気にならなかったの?』って。よく、刑事ドラマなんかで、毎日監禁されて同じことを聞かれていると心神耗弱状態になってやってもいない罪を認めてしまうシーンがあるでしょ。あれと同じですよ。自分の当時の気持ちがどうだったかと考える前に、妻の誘導尋問に乗って、もういいや、それでと思う。そのことでさらに妻が激昂する。その繰り返しなんです」
今回、改めて誠司さんと会い、あのころから今までの話を整理して語ってもらった。
「腐れ縁」だった妻
誠司さんと亜樹さんは同じ大学で学んでいた。1年浪人した誠司さんが2年生のとき、所属していた音楽サークルに新入生として入ってきたのが亜樹さんだった。当時は亜樹さんと一緒に入部した優花さんに一目惚れした誠司さん、3回告白して3回フラれた。それを慰めてくれたのが亜樹さんだった。
「気づいたらいつもそばに亜樹がいてくれた。いちばんたくさん話したのも亜樹だった。卒業するときやっと自分の気持ちがわかって、亜樹に告白したんです。でも『優花の代わりがほしいだけでしょ』とフラれました」
ところが卒業してそれぞれ就職したあとも、亜樹さんとは連絡が途切れなかった。1年後、サークルの同窓会で、亜樹さんは「誠ちゃんが忘れられない」と逆告白、やっと交際がスタートした。
「でもお互いに若かったので、くっついたり離れたりしていましたね。亜樹は、僕がもともと優花を好きだったと知っているから、ひどく嫉妬深くて。僕がそれにうんざりしてもう別れると言い、別の女性とつきあったりするんだけど、しばらくたつと寂しくなってまた連絡して……。そんなことが数回ありました。あのころはあまりいい関係だったとは思えないけど、腐れ縁というんでしょうか、なぜか縁が切れなかった」
周りが結婚し始めた20代後半、亜樹さんは「田舎の親が帰ってこいって。見合いして結婚してほしいって言ってる」と言い出した。男を決断させるために女性がよく使う手法だと判断した誠司さんは、「そうしたいならすれば?」と言ってみた。
「亜樹は本当に実家に戻って見合いをし、僕に見合い相手との写真を見せながら『この人で手を打とうかなと思ってる』と言うんです。地元の名家の長男だと。『オレとつきあっているのに本当に見合いをしたわけ?』と思わずムッとしました。『だって誠ちゃんがはっきりしないから。最初で最後に聞くけど、私と結婚するつもりはないんでしょ』と言われ、結婚しようとプロポーズしました。回りくどい男だと怒られましたが、僕自身はそれほど結婚そのものへの願望がなかったんですよ」
とはいえ言ってしまった手前、結婚しないわけにはいかなかった。彼にとって、亜樹さんが大事であることと結婚がイコールではなかっただけなのだが、亜樹さんにとっては愛情イコール結婚だった。
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