高齢者の「受診控え」で「認知症患者が300万人増加」 コロナ自粛の弊害を専門医が指摘
1千万人が認知症患者に
改善策ももちろん、運動、知的活動、コミュニケーションで、外出が重要だが、
「自宅でできることもある。私が鳥取県と共同で開発した『とっとり方式認知症予防プログラム』も見ていただけたらと思いますが、家のなかをぐるぐる歩いたり、庭を歩いたりするだけでも有効です。運動によって脳内の血の巡りがよくなるうえ、神経栄養因子と呼ばれる、神経細胞を活性化させるホルモンが出るといわれ、弱っている神経細胞を活性化する効果もあります」
加えて、浦上氏が強調するのは、感染予防と認知症予防の両立である。
「2025年には認知症患者が700万人になると推計されていますが、感染予防に偏った結果、1千万人くらいになりはしないかと懸念しています。私も関わる鳥取県琴浦町の認知症予防の取り組みでは、緊急事態宣言下でも予防教室を開催し続け、一人の感染者も出しませんでした。感染対策次第で、両立はできるものだと思います」
コロナ禍で弱った高齢者たち
認知機能の低下だけにとどまらない危険性を指摘するのが、たかせクリニックの高瀬義昌理事長で、
「私は認知症(Dementia)、抑うつ(Depression)、せん妄(Delirium)の“三つのD”と呼んでいます」
と言って、続ける。
「当院の患者の平均年齢は86歳で、多くの方に認知症がありますが、自粛生活が続いてデイサービスにも遊びにも行けないと、抑うつ状態になってしまいます。また、ストレスにより意識精神障害の一種のせん妄が生じることもあります。このうち二つ、三つが重なっている人も珍しくありません。抑うつの主な症状は外に出たくなくなる、運動したくなくなる、食欲がない、といったもので、結果、免疫が落ち、肺炎や帯状疱疹など、ほかの病気にもかかりやすくなります」
この日も高瀬理事長は、
「認知症と抑うつを併発している人を診ましたが、必要な栄養が取れず、ベッドから動けなくなっていました。筋力が低下し、ちょっと歩いただけで転んで、腕と膝を骨折した方も診ました。このようにコロナ禍で弱った高齢者は、枚挙にいとまがありません」
対策としては、
「コロナやインフルエンザのワクチンもしっかり打ち、心臓や血管系の定期健診を受ける。整形外科で骨をチェックするのも有効です。体力づくりでは食事のほかに“マルチビタミン&ミネラル”などのサプリメントを補助的に飲むのもいい。食事を満足に取れないときの助けになります」
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