高齢者の「受診控え」で「認知症患者が300万人増加」 コロナ自粛の弊害を専門医が指摘
外出自粛による健康二次被害
スポーツ医学や健康政策を専門とする、筑波大学大学院教授の久野譜也氏が、さらに問題をえぐり出す。
「地域のコミュニティーに参加し、スポーツや文化活動、社会貢献活動などに積極的だった高齢者ほど、心身機能の低下が見られます。国や自治体が強い自粛要請をかけたことによる健康二次被害といえます。独居や夫婦世帯も多いので、活動が減って人に会わないと会話の機会が減ります。会話中は脳が高速で使われ、これが減る影響は大きいです」
また、家から出ないと、うつ傾向が高まるという。
「すると楽しいことが少なくなって、笑う機会が減り、社会性が低下して、人に会うために着替えたり化粧したりするのも煩わしくなり、ますます外出しないという悪循環に陥りがちです。だから厚労省は、高齢の方に社会と関わり続けてもらおうと、外出を促す施策を強化しはじめたところに、コロナ禍の自粛要請でした。ステイホームは必要な施策ですが、こうしたリスクへの対策も講じるべきでした。事実、半年ほど前に自治体の調査をしたところ、健康二次被害を防ぐために、高齢者に外出してもらう方向に舵を切った自治体と、そうでない自治体とでは、昨年度の介護の発生率に違いがあったのです」
3・11の事例も参考になるという。
「震災後2年ほどは、週3日以上外出した人と、週に1回出るか出ないかの人とで、要介護者が出る割合は同程度でしたが、その後3倍程度の差がついてきました。ずっと閉じこもっていた人がこれからだんだん弱ってくる可能性があり、早く対策を講じるべきです」
糖尿病などの基礎疾患が悪化
身体機能の衰えは、すでにほかの識者も指摘したように足腰の衰えが中心で、
「筋肉量が落ちてくると歩行速度が低下し、体力自体の低下にもつながり、階段を上るのがきつくなるなどの虚弱化が見られます」
意外なところでは、
「糖尿病などの基礎疾患が悪化する例も増えています。家にいると動かないだけでなく、ストレスも加わってつい食べすぎます」
久野氏はさらに、認知機能について加える。
「物忘れの頻度が変わっていないか、まずは自分でチェックしてほしい。それから、話していて言葉が出てこないことが増えていれば、認知機能の低下の一つの表れだと思います。3カ月前、半年前とくらべて変化があると感じた方は、コロナフレイルの影響を疑ったほうがいい。絶対値だけでなく、こうした変化も重視してほしいです。半年ぶりに親に会いに行くと、以前は夫婦でゴルフなどもしていたのが、立ち上がることさえ大変になっていた、といった話はよく聞きます」
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