高齢者の「受診控え」で「認知症患者が300万人増加」 コロナ自粛の弊害を専門医が指摘
2週間以上誰とも話さない男性も
心療内科医、循環器科医で、大阪大学大学院人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏は、
「自分で自転車に乗って来られていた患者さんが、外に出なくなって身体機能や認知機能が低下し、数カ月後には奥様に連れられタクシーで来るように。その後、しばらく来ないので奥様に電話すると、状態がさらに悪くなって施設に入られたとのことでした。あっという間でしたよ」
と言い、さらに続ける。
「いろいろなことがおっくうになる人が多いです。そもそもは加齢が原因ですが、コロナ禍で加速している印象です。プラモデルを作るのが好きだという方に、手先を動かすのは良いと伝えたのですが、なんだかんだ理由をつけて作らないようです。家にこもってずっとテレビを見ているような生活を続けていると、だんだんやる気が失せ、おっくうになるのでしょう。女性は買い物に出かけ、家のなかでもこなす家事が多いので、こういう状態にはなりにくい。特に男性が危険です」
男性は2週間以上、誰とも喋っていない人も珍しくないそうだ。
恐怖をあおる情報に触れてうつ状態になる人も
次に、西日本で在宅医療に携わる医師の話である。
「コロナが怖いからと外出やデイサービス通いをやめてしまう方が多く、本人だけでなく、家族が感染を恐れて、高齢者を外出させないケースも目立ちます」
すると、あっという間に筋力が低下し、歩行困難になるという。さらには、
「外界からの刺激がなく、認知症が進む例も多い。軽度の認知症だった人が、何度も訪問している私の顔がわからなくなることも。私はデイサービスの再開を促しますが、家族が同意しないことも多い。また、ずっと家に引きこもってコロナの恐怖をあおる情報に触れ続け、うつ状態になった人もいます。結果、食欲がなくなったり、悲観的なことを口にするようになったり、不眠になったりします」
こういう人の情報源は、
「ほとんどがテレビ。閉鎖的な空間でワイドショーばかり見ていたことの弊害ではないかと思います」
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