高齢者の「受診控え」で「認知症患者が300万人増加」 コロナ自粛の弊害を専門医が指摘

ドクター新潮 医療 認知症

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 誰もが2年以上も続くと思わなかったとはいえ、コロナ禍の自粛続きで高齢者の心も体も大きく痛んでいる。しかし、いま気持ちを切り替え、自己診断をしっかりして対策を講じれば、健康長寿への道はまだ開ける。そのための方法を専門家と一緒に考えよう。

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 2年余りのコロナ禍で強いられてきた自粛の最大の目的は、高齢者の命を守るためだったはずだが、その結果、高齢者の健康が危機にさらされるなら穏やかでない。高齢者は病院通いを控え、認知症治療や身体機能の回復を図るリハビリに通う患者数も、2~3割減っているというのである。

 浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は、こう嘆く。

「歩く機会が減ったために、転倒し、骨折する例が増えたようですが、年配の方が入院すると、さらに筋肉が衰えて動けなくなってしまう。また、入院して寝たきりになると、筋力が衰えて嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎を発症するリスクも高まります。これだけ刺激がなくなれば、認知機能が落ちる要因にもなります」

ステイホームがもたらした罪深い弊害

 新型コロナの感染を防げても、健康寿命が縮んでしまっては元も子もあるまい。全国的にまん延防止等重点措置が解除されたいま、自分の、あるいは家族の心身の健康を、掲載の「チェックリスト」を参照して確認し、該当する点があるなら対策を講じて、できるかぎりの回復を図りたい。

 ニッセイ基礎研究所の調査では、対面のコミュニケーションが減ったと答えた人が、65歳以上では52%に及ぶ。政府や自治体の「ステイホーム」の呼びかけが浸透したわけだが、もたらされた結果は罪深い。だが、老年医学が専門の精神科医、和田秀樹氏が言う。

「老年医学の考え方に“フレイル”があります。歩けなくなった方が、リハビリで歩行機能を回復するのはなかなか難しいですが、そういうまき直しが困難な要介護者と、まだ元気な方の間にいるのがフレイル。外出が極端に減った、誰とも話さなくなった、食事の量や回数が減った、などがフレイルの特徴で、この段階なら運動や食事に気を配ることで、持ち直せる可能性があります。人はいきなり要介護になるわけではないので、本人や家族が気付くことが大切です」

 こうした指摘は日本医師会や日本老年医学会も、以前は重ねていたのだが、

「コロナ禍では“反自粛”ととられかねないので、まったく言わなくなってしまったのです」(同)

 そうであるなら、われわれが意識的になり、自分で気を付けるほかあるまい。

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