家庭環境のせいで不倫相手を取っ替え引っ替え… 49歳男性が46歳にして落ちた「本気の恋」の結末
結婚していても、他の女性とデートすることにまったく罪悪感など覚えない人たちが一定数いる。男女ともに知っているが、やはり数としては男性のほうが多いだろう。そのあたりは昔から「浮気は男の甲斐性」と言われている面が残っているのかもしれない。【亀山早苗/フリーライター】
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佐々野晃太さん(49歳・仮名=以下同)は、結婚後も数多くの女性とつきあってきた。だがそこには彼なりの考えがあった。
「どうやら自分は他の男性より少しだけ女性が好きみたいだと思ったのは、大学生のとき。一般的には誰かとつきあうと、“恋人”となって行動をともにしたり友だちに紹介したりするものですよね。だけど僕はそれができなかった。好きだなと思って会うようになっても数ヶ月で飽きてしまう。女性本人に飽きるというよりは、状態に飽きるんですね。同じ人と半年も1年も同じようにデートして親密になって……そのあとはもう何もない。かといって口説くことに命がけみたいになるのも性に合わない。さらっとつきあってさらっと自然消滅。それがいちばん気楽だし自分に合うなと思っていました」
大学2年のとき、サークルで知り合った後輩と少しの期間、関係をもって、いつものように自然消滅だなと思ったことがある。ところが彼女は、他の女性たちのようにさらりと別れてくれなかった。彼にとってトラウマになるような別れとなってしまったのだ。
「彼女とはときどきランチしたりお茶したりする仲ではあったんです。あるときふたりでお茶して『このあと暇だなあ』と言ったら、彼女が『私も』って。じゃあ、アパートに来る? ということになって。それで関係をもった。何度かそういうことがあったけど、僕はだからといって彼女といつも一緒にいたいわけではなかったんです。でも彼女は『今度、映画見に行こう』『週末、一緒にいよう』と言い出した。映画を観る時間はない、週末はアルバイトだからダメ、といちいち言っていたら号泣されて……。そもそも恋人というわけでもないしとポロリと言ったらさあ大変。翌日、彼女の友人たち5、6人に囲まれて、どういうつもりなんだとか遊びで誘ったのかとか詰め寄られまして。土下座して謝りました」
それでも彼女の「恋心」は消えることなく、キャンパスのあちこちで待ち伏せされたりアパートに押しかけられたりした。つきあっているつもりはなかったが、相手はそうではないこともあるのだと骨身にしみた。
「それまでは年上のお姉さんタイプの女性と数回、関係をもつだけということが多かったんです。つきあうとか別れるとか、そういう感じではなくて、お互いに時間があれば会う。それが続くかどうかはそのとき次第。だから一般的にいう『恋をしてつきあう』の意味がわかっていなかったんだと思う」
彼女は本気だったのだ。そして本気の女性は怖いと彼は感じていた。とうとう、「僕はあなたに恋していないから」と目を見て言った。彼女は精神的に不安定になり、そのまま大学を中退して地方の実家に帰った。その話は噂になり、彼は後ろ指を指されたこともある。
「僕も彼女のことはもちろん好きだったんですよ。だけど長期間にわたってふたりだけの親密な関係を持ち続けたいとは思えなかった。自分では普通だと思っていたけど、当時、友人たちに『それはおまえ、人としてダメだよ』と言われて、そうか、そういうものなのかと少し驚いた記憶があります」
笑ってしまった父の葬儀の光景
男女の仲など、人によって距離感もつきあい方も違うはずだが、“一般的には”誰かひとりとつきあったら、つきあっている間は頻繁に連絡をとりあったり会ったりするのが当然なのだが、彼にはそういう感覚が欠落していたのだという。
「それは僕が育った環境によるものだと思います。6歳のときに両親が離婚して、父は別の人と再婚したんです。だけどその後もたまに来ていた。中学生にもなると事情がわかってくるでしょ。父が再婚したあと、母は父の愛人になったんです。笑っちゃうような関係なんだけど、結局、父と母は実質的には離れられなかったんでしょうね。物心ついたころから、父は“家にいる人”ではなく、“家に来る人”だった。両親はどういうつもりで関係を続けていたのか知らないけど、僕から見ればふたりは“線ではなく、点でつながっている関係”に見えたんです。だから男と女はそういうものか、と刷り込まれたような気がしますね。会いたいときに会う、会えない時期もある、会わずにそのままになることもある。それが男女なのかな、と」
彼が受験勉強をしていたころ、突然の病で父が死んだと“本妻”から連絡があった。母はためらっていたが、彼は母を「本妻宅」へと連れていった。
「そこでわかったのは、父が亡くなる1週間前に本妻さんと離婚して、母との婚姻届を提出していたこと。ずいぶん前に、母は冗談のように婚姻届を書かされたそうです。『気持ちだけでも結婚していたい』と父に言われた、と。調子のいい男ですよね。母はそれきり婚姻届のことは忘れていた。でも父は虫が知らせたんでしょうか、提出していたんです」
離婚したばかりの“本妻”は、「私はどうしたらいいんでしょう」とおろおろしていた。母も彼女に同情し、「どっちでお葬式を出します?」と尋ねていたとか。
「大人って、男と女って愚かだなと思いました。でも女性ふたりのやりとりについては、悪い気はしなかった。結局、父はどちらにも愛されていたんでしょう。お葬式は葬儀会場でやりましたが、親族席に母と“愛人さんだか本妻さんだかわからない女性”が一緒に並んでいたのは僕から見ても笑ってしまうような光景でした。ふたりとも相手に遠慮しながら、ぼそぼそとしゃべって仲良くなったみたい。お墓は母が建てたようですが、父がわずかに貯めていたお金はふたりで分けたそうです。相続するほどのものはなにもなかった。僕は父が大事にしていた時計を形見分けとしてもらいました」
恋人だの妻だのという形にとらわれない関係が、晃太さんの体にも染みこんでいたのかもしれない。だから彼の恋愛は一般的ではなかったのだ。
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