なぜ「食い逃げ」「持ち逃げ」が起きない? 餃子からファッションまで…「無人販売」が流行
「今しかない」と無人の古着販売を
昨年の緊急事態宣言時は1日平均6万円の売り上げがあった。
「監視カメラがあるとはいえ万引きなどリスクもありますが、その損失額より従業員をひとり雇う方がコストもかかる。居酒屋時代は100人ほどスタッフを抱えた時期もありましたが、今は自分だけ。無人なのでかけ持ちで他の仕事もできる。現在は飲食のコンサルタントもしています」
生ビールも販売している(自粛期間中などは休止)。コンビニのコーヒーのように、空のカップを購入して自分で注ぐセルフ方式。朝でも昼でも真夜中でも、飲食店と同クオリティの生をグビリとやれる。無人販売もここまできたか……。
と、感心してる場合じゃなかった。飲食に限らず、無人販売の波は古着業界にも押し寄せる。20年8月に東京は中野区野方で「ムジンノフクヤ」を開業した平野泰敬さん(36)の話。
「古着販売はインターネットなどで手がける人が増え、競合が激しくなっています。差別化のため、以前から無人販売に注目していました。防犯面で踏み出せなかったところにコロナ禍となり、タイミング的にも今しかないと思ったのです」
無人の古着屋は「店員のプレッシャーがない」と好評
人件費削減で販売価格を抑える狙いがあるのはもちろんのこと、そもそも接客サービスの必要性を感じなかった。利用客からは「店員に声をかけられるプレッシャーがない」と喜ばれているそうだ。
店内は約700点の古着が所狭しと並ぶ。赤や青などハンガーの色で価格が分けられており、たとえば白のハンガーなら1480円。その額のチケットを券売機で購入して持ち帰るシステムだ。試着室もあり、フィット感を確かめられる。これはネット販売にはない利点である。
一方、無人だと利用者の声を直には聞けないため、「連絡帳」を置いた。のぞくと「女性物を増やしてほしい」などのコメントがビッシリ。嬉しいことに他県からの来店も多いそう。
「券売機の上にモニターを設置し、店内の様子を映していることも防犯につながっていると思います。取り扱う古着が海外の一点ものなので、売却目的では盗みにくい。予想以上に来客者が多く、月250着ほど売れることもあります」
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