なぜ「食い逃げ」「持ち逃げ」が起きない? 餃子からファッションまで…「無人販売」が流行
児童養護施設に餃子を届ける取り組み
確かにコロナ禍の情況に合致したとはいえ、物珍しさだけでここまで人気は続くまい。やはり根底にあるのは3代目店主お墨付きの味だ。キャベツたっぷりの餡はヘルシーで野菜の甘みが際立つ。現在は埼玉の工場で一括生産しており、1日で使うキャベツの量は何と15トンにもなるという。
昨年11月、同社は全国紙に全面広告を出した。「日本は、いい場所だね。」とのコピーを掲げ、「児童養護施設に無料で餃子をお届けします」と謳い、送付先の施設を募集したのだ。高野内さんが経緯を語る。
「私たちの売り上げはお客様の誠実さの証明。支払いせず商品を持って帰る人はほとんどいません。その善意にあやかり、伝説の味で食卓を明るくしてほしいという思いを込めて、児童養護施設に餃子を届ける取り組みを始めたのです。現在は292施設に餃子を毎月1万3560人分(施設職員含む)贈っています」
黒毛和牛ホルモンの無人販売も
万引き防止に一役買っているのは、賽銭箱風の料金箱。悪事を働きにくくする心理的効果があるようで、同業他社の多くも類似のタイプを取り入れている。
さて、昨今の無人販売のトレンド商品は火付け役ともなった餃子だが、昨年5月、東京・恵比寿に堂々お目見えしたのは黒毛和牛ホルモン店である。その名も「naizoo(ナイゾー)」。
ポップなネオン看板が目を引く店内。とてもホルモン店とは思えないが、並んでいるのはレバー、小腸、ミノ……間違いなくホルモンだ。他にステーキ肉などもあり、すべて冷凍パックで販売される。会計はタブレット端末を利用するキャッシュレス決済。いかにもトレンドの先端を行く街らしい。
代表をつとめる蒲池章一郎さん(38)は、都内で居酒屋など7軒を経営していた。だが、コロナ禍による経営難で見切りをつけてすべて売却。別業態でのチャレンジを考えた。
「餃子の雪松さんのような成功例があったので、以前から取引のあった黒毛和牛専門の卸売業者と業務提携し、ホルモンの無人販売で勝負しました。ホルモンといえばモツ鍋や焼肉が一般的で、家で調理することは少ない。新たな文化として自宅で楽しめる方法を提案したかったんです」
ミシュランの星付きイタリアンで修業した料理人の協力を得て、ホルモンを使ったハンバーグやカレーなどの手作り料理も700円前後で用意。焼いたり温めたりするだけで一流シェフの味が楽しめると好評だ。
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