「NGT48騒動」報道でトラブル発生… 元記者が直面した「NHK幹部」の“超”無責任体質
AKSとの橋渡しを務めた大物プロデューサー
このとき新潟局にとって救世主的な存在が現れた。過去に紅白歌合戦のプロデューサーも務め、AKSや秋元康氏と太いパイプを持つNHK関連会社に籍を置くベテランのIプロデューサーだ。
遡ること2年。毎年行われていたAKBグループの総選挙でNGT48の荻野由佳さんらが初めてベスト10に入る躍進を見せた際、私が新潟ローカルの番組で特集として取り上げたのがきっかけだった。当時の新潟局にAKBとのパイプがあろうはずもなく、BS放送でAKBの番組を制作していたIさんに映像提供の橋渡しをしていただいた。それ以来、全く連絡を取ったこともなかったので、それこそ虫のいい相談だったが、取材が難航する中、Iさんに連絡したところ、二つ返事で協力していただけることになった。
このサポートがなければNHKのNGT48報道は惨敗だっただろう。何しろ民放が連日放送していたNGT48のプロモーション映像すらNHKは入手できていなかった。AKSからすればNHKの地方局など眼中になく、再三にわたって映像提供やコメント取材を依頼しても「担当者が不在」などの1点張りで相手にされていなかったのだ。ところがIさんが仲介を始めた途端、ガラリと対応が変わった。「Iさんの手まで煩わせて申し訳ありません」とIさんに謝罪のメールを送るとともに新潟局の依頼に対応してくれるようになったのだ。こうした経緯でNGT48のプロモーション映像の入手や騒動に対する最低限のコメントは取れるようになった。
その後もIさんは新潟局の記者がキャッチできない東京のAKSに関する情報をしばしばショートメールで私に知らせてくれた。休日に突然、全く無警戒だった情報を送っていただき、慌てて出局して夕方のニュースに突っ込んだこともあった。また、東京で突然開かれることになったNGT48の参加するAKBグループのコンサート会場に新潟局の記者が入場する手配をしていただいたこともあった。新潟局からすれば足を向けて寝られないほど一方的にお世話になったと言っていい。
秋元康氏サイドとNHKのトラブル
ところが、こうした中でNHK新潟放送局のローカル番組をめぐって秋元氏サイドとの間でトラブルが発生した。NGT48をめぐる騒動が起きてから3か月後の4月、夕方のローカル番組で15分間の特集を組んだ際、担当記者がAKSの対応の不手際を改めて指摘する解説の中で、「会社の社長とともに秋元氏も前面に出てガバナンス体制の見直しにどう取り組むべきかが問われている」などと秋元氏の責任に言及したことが引き金になったとみられる。
この指摘自体は特段珍しいものではなかった。AKBグループと言えば誰しも思い浮かべる秋元氏もこの騒動について積極的に説明する責任があるのではないかと指摘したレベルで、すでにネット上などでもこうした主張は飛び交っていた。ところが、テレビでは新潟県内でしか放送されないこのローカル番組の映像が無断でYouTube にアップされて全国のAKBファンなども視聴したことで波紋が広がり、秋元氏サイドも看過できなくなったようだ。
秋元氏サイドとすれば、プロデューサーとして楽曲などを提供する生みの親とはいえ、組織として危機管理に当たるのはAKSであり、みずからが非難の的とされるのは不本意だったのだろう。この放送から数日後の夜、まずIさんから1本のショートメールが私のスマホに届いた。
「AKSが新潟のニュースの責任者と話をしたいと言っている。ニュース責任者の名前を教えてくれませんか」
番組への抗議だろうか。ネットで話題になっていることは把握していたので咄嗟にひらめいた。IさんはNHKの一員であるし、新潟局ニュースの責任者の名前を伝えることに問題はないが、それなりに重い話だ。私は直接、Iさんの携帯に電話を入れた。Iさんからの説明は大まかに以下の内容だった。
「AKSは誰も傷つかない形で問題を収めたいと考えているようだが、事態が好転せず、どう対応を取るべきか悩んでいるようだ」
そこで今後の対応を探る上でNHK新潟局の責任者と話したいと考えているようだとの内容だった。
元々こうした申し入れに対応する窓口は、地方局では基本的に放送部のニュース担当副部長か、案件のレベルに応じて放送部長や副局長が対応する。NGT48の話題をめぐっては元々ニュース部門でトップの副部長が担当デスクでもあったので、念のため、副部長に電話して名前をIさんに伝えることの了承をとったうえでショートメールを打ち返した。
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