健康長寿を実現する「年代別の生き方」 6千人超の高齢者を診た専門医が指南
カラオケ、キャバクラの効果
問題は脳の使い方です。ボケ防止に「脳トレ」がいいといわれますが、あれは効果がゼロではないものの、数学のパズル「数独」を解く脳トレをしても数独の力しか維持されません。それよりも大事なのは、日常的に行っていることを、やめずに続けることです。
読書もいいです。いまの70代は全共闘世代で、学生時代にたくさん本を読んできた人が多い。知的レベルが高い世代なので、読書する習慣がある人は、ぜひ継続してください。
声を出すことも効能的なようです。私が診たアルツハイマーの患者さんで、詩吟を続けていた人は進行が目立ちませんでした。だから、カラオケにも同様の効果があると思います。
年を取ると、女の子が接客する店に行くことなどは、慎むべきだとされがちですが、仕事を辞めた70代にとっては脳の活性化になるよい機会。キャバクラのほか、スナックや小料理屋に通うのも、話術を鍛えることにつながり、前頭葉のトレーニングになります。
介護保険が始まる前の話ですが、東京都杉並区と茨城県鹿嶋市の認知症患者では、後者のほうが進行は遅いと確認されました。杉並では、家族が認知症を恥ずかしがり、高齢者を家に閉じ込めていたのに対し、鹿嶋では歩かせていたのです。農業や漁業の従事者も多く、その人たちは認知症になっても仕事をしていました。
肉を食べることの重要性
また、70代は栄養をつけるべき年代です。特に肉を食べること。男性ホルモンが分泌されるので行動的になる、という好循環も得られます。一方、動脈硬化も進んでくるので、水分をこまめに補給し、血液を濃くしすぎないことです。
動脈硬化の予防には、血圧や血糖値、コレステロール値を下げるのがよいとされてきましたが、ひとたび動脈硬化になってしまったら、数値はむしろ高めにコントロールしたほうがいいです。血圧が低いと脳に酸素が届かず、血糖値が低いと脳にブドウ糖が行き渡りません。血圧や血糖値が高いほうが、脳の調子はよくなるのです。
これらの数値はアメリカで危険視され、日本も追随していますが、アメリカでは心筋梗塞で死ぬ人が、がんで死ぬ人の1.7倍。一方、日本ではがんで死ぬ人が心筋梗塞の10倍。食生活や疾病構造が違うアメリカに倣う必要はありません。
日本では長く脳卒中が死因の1位でした。それが減ったのは、減塩運動の成果だといいますが、違います。かつて多かった脳内出血が減ったのは、タンパク質を摂取できているから。昔を知る人ほど、脳卒中を過度に恐れて血圧を気にしますが、栄養状態がよければ脳内出血は起きにくいので、安心してください。
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