健康長寿を実現する「年代別の生き方」 6千人超の高齢者を診た専門医が指南

ドクター新潮 健康 長寿

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なるべく施設に

 ですから介護が必要な親は、なるべく施設に入れることを勧めます。介護施設で虐待が行われていたことがニュースになることがあります。しかし、珍しいからニュースになっているのであって、多く発生しているわけではありません。かたや在宅介護の経験者の35%が、介護虐待をしたことがある、と回答したアンケート結果もあるくらいで、親にとっても在宅介護のほうが、よほど不幸であるかもしれないのです。

 昔は認知症が「子供がえり」、つまり幼時に退化する病気と勘違いされ、施設で高齢者を「ちゃん」づけで呼んだり、童謡を歌わせたりすることがありましたが、いまは、そんなことはありません。高齢者のことを熟知している人が介護したほうが、介護される側も幸せだと思います。

70代でも大統領は務まる

 70代は認知症の有病率が前半で5%程度、後半では10%弱になります。うつ病と認知症の有病率が逆転するのもこの年代です。要介護率は9~10%で、がん死亡率は10万人あたり807。働くことが困難になってくるので、老化が一気に加速する年代なのです。

 ただし、認知症になっても落ち込むことはありません。昨年、95歳で亡くなった脚本家の橋田壽賀子さんは、「自分が認知症になったら安楽死させてほしい」と訴えていました。そういう発言を聞くと、認知症になったら日常生活も送れないと思ってしまいがちですが、それは誤解です。

 認知症は徐々に重くなる病気。軽いうちはかなりのことができます。アメリカのレーガン元大統領は、辞めて4年目で認知症だと告白しましたが、認知症は少しずつ進むので、在任中から発症し、もの忘れぐらいあったはずです。軽いうちは大統領も務まるのです。

 70代は仕事ができなくなっている場合が多いだけに、認知症を予防し、進行を遅らせるため、意識的に運動し、頭を使うことです。

 70代になれば、だれでも脳が萎縮します。現実には、現役の会社社長と、ボケてしまった無職の人がいますが、脳のCTを撮れば、同じくらい縮んでいます。差が出るのは、脳は使っていれば、縮んでも認知症になっても機能するからです。

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