健康長寿を実現する「年代別の生き方」 6千人超の高齢者を診た専門医が指南
4、5年に1度は脳ドックや心臓ドックを
50代ではもうひとつ、健康診断の検査データに異常値が見られるようになることが挙げられます。動脈硬化や心筋梗塞は起きにくい代わりに、血圧やコレステロール値などに異常が生じることが多いです。
しかし、検査データを気にしすぎることを、私は勧めません。たとえばコレステロール値。近年、コレステロール値が下がると、むしろ免疫機能が低下し、がんや感染症にも罹患しやすくなるとわかっています。コレステロール値が高めのほうが長生きできる、という調査結果も多いのです。
心筋梗塞や脳梗塞を防ぎたいなら、むしろ動脈硬化がどれくらい進んでいるか、直接確認したほうがいいでしょう。日本は血管内治療の技術では世界一です。心臓狭窄と判明すれば、バルーンを入れて冠動脈を広げ、治療することができる。最近では血管を内側から固めることもできるので、脳動脈瘤破裂も防げます。
心配であれば4、5年に1度、脳ドックや心臓ドックを受けましょう。もちろん60歳以上の人にも勧められます。突然死を避けられるという点で、意味があると思います。
日本では「ピンピンコロリ」が理想だとされていますが、あれは突然死。死ぬまでに考える時間をもてないし、死後に見られたら嫌なものがない人は、あまりいないと思うのです。
60代は是が非でも仕事を
60代は認知症の有病率はまだ1%弱で、要介護率も2%未満。がん死亡率は10万人あたり393です。しかし、前頭葉機能がさらに低下し、意欲が失われていく年代です。
いま各企業などは、65歳まで雇用確保が義務付けられていて、働いていれば無理にでも頭を働かせるため、脳の機能も維持されます。しかし定年退職してしまうと、急に頭も体も動かさなくなり、老け込んでしまいがちです。だから、是が非でも仕事は続けたほうがいいです。
もっとも、それまでと同じ仕事をする必要はありません。年金も支給されはじめるのだから、月に20~30万円稼げれば十分。やりたいことをやればいいと思います。たとえば映画が好きなら、映画のアシスタントディレクターもいいでしょう。映画業界は人手不足なので、月に20~30万円でよければ、雇ってもらえる可能性があります。実入りは安くても楽しくやりがいがある仕事を選べるのは、この年代の特権です。
60代はまた、親が80代、90代になって、介護に追われる年代ですが、介護に身を入れすぎるのは危険です。離職してまで介護に専念する人もいますが、そうすると人間関係が切れてしまい、職場の人はもとより友人と会う機会も激減し、前頭葉のさらなる萎縮につながってしまいます。また、介護に多くを捧げた人ほど、親が亡くなってしまうと深い喪失感にさいなまれ、うつの危険性も高まります。
[4/8ページ]