健康長寿を実現する「年代別の生き方」 6千人超の高齢者を診た専門医が指南
高齢者は一気に老いるわけではない
ところで、最初に挙げた二極化は、世間やメディア、それに政府までが、高齢者を誤って認識していることにも起因しています。いまの80歳は1942年生まれですから、小学校に脱脂粉乳が配られ、学校給食も食べてきた最初の世代。幼少期からタンパク質を十分に摂取し、栄養状態がよかったので、昔にくらべると体格がよくて若いです。
一方、戦後まもなく描かれた「サザエさん」の磯野波平は54歳、フネは48歳で、現代の感覚からすると、年齢よりかなり老けています。当時は栄養状態が悪く、男性でも身長が160センチに満たない人が多く、老けるスピードが速かったのです。
いまなお昔のイメージが根強く残っているので、65歳以上は「高齢者」として一緒くたにされがちですが、高齢者は一気に老いるわけではありません。栄養が行き届いたいまの元気な高齢者なら、なおさらです。老い方は年代によっても、個人によっても、じつに多様で、多彩なグラデーションがあります。
同じ病気でも対応は異なる
それでも、年を追って老化が進むことは避けられません。ですから、老化と闘って、どこかのタイミングで「ウィズ」を決断するにせよ、どの年代でどういうことが心身に生じ、どのように気を付ければいいのか、年代ごとのリスクを把握しておくに越したことはありません。
それだけではなく、年代によって、たとえ同じ症状でも、かかっている病気が違うことは多く、同じ病気であっても、対応を変える必要も生じます。
それでは、各年代でなにが起きやすいかという「傾向」を記しながら、これまでに6千人以上の高齢者を診てきた老年医学の専門家の視点で、「対策」を示しましょう。
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