元記者が見たNHKの政治忖度 ウェブ記事の見出しから「安倍内閣支持率『低下』」を外せ!

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 受信料徴収や字幕問題を受け、いま、改めてNHKの在り方が注目されている。およそ20年間に亘り記者・デスクを務めた大和大介氏が、知られざるNHKの内幕を綴る――。

※本稿は、大和大介『元記者が証言するNHK報道の裏側―NHK受信料は半額にすべき』(展転社)の一部を再編集したものです。

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政治への忖度を感じたWEBページの「見出し」

 NHKを語るとき、よく言われるのが政治への「忖度」だ。いわゆる森友事件をめぐるニュースなどで忖度が動いたと指摘されたが、こうした指摘は今に始まったことではない。予算や決算が国会で審議される以上、NHKが政治の影響を全く受けないと考えるNHK職員の方が少ないだろう。私自身はNHK在籍中の大半を地方局で過ごしたうえ、政治部との人脈も薄かったので、生々しい政治への忖度に触れたことはない。だが、随所に「やはりNHKは政治家に遠慮している」と思う場面に出くわすこともあった。

 NHKのニュース記事をNHKのWEBサイト「NHK NEWS WEB」にアップするネット報道部(現在の名称はネットワーク報道部)という部署がある。現在はWEB業務の拡大とともに報道局でも大所帯となっているが、私が在籍した平成25年ごろは、地方局のデスク経験者を中心に20人弱が、東京・渋谷の放送会館地下の狭い居室に詰めて作業をする小さな部署だった。このメンバーで、WEB用に原稿を編集する担当者と、タイトルをつけてネットに発信する担当者、泊まり担当者と、ローテーションを組んで24時間体制でネットにニュースを発信する作業を続けていた。

 この部署に所属していた平成26年ごろのことだ。定期的にNHKが行っている世論調査の結果をまとめた原稿が届いた。通常、世論調査の記事で最も関心があるのが政権の支持率の動向だろう。このときは安倍内閣の支持率が前回調査から4%から5%ほど低下していた。正確な数字は記憶していないが、仮に56%から51%に低下したとしよう。タイトルをつけて記事をアップする担当だった私は、「安倍内閣支持率 51%に低下」というタイトルでWEBに発信した。この判断に違和感を覚える読者はまずいないと思う。

上司から「支持率低下の文字を外せ」

 ところがこの記事を「NHK NEWS WEB」サイトにアップして間もなく、別の居室にいるネット報道部幹部から電話が入った。

「安倍内閣支持率低下のニュースだけどさ。これ、タイトルから『低下』の文字を外してくれるか」

 ああこれがいわゆる政治への忖度かと思いつつ、真意を確認してみた。

「このニュースは支持率の低下が一番のニュースと思って『低下』の文字をつけました。これを修正する必要があるんですか」

「いや、タイトルは支持率の数字そのものだけでいいんだ。とにかく『安倍内閣支持率 51%』だけに修正してくれ」

 結局、押し切られ、タイトルを直すことになった。隣の同僚に上司から指示があったことを伝えると、「えっ支持率の低下がニュースでしょう。判断がおかしいんじゃないの」と反応が返ってきた。これが真っ当な感覚だろう。もちろん日常的にこのレベルの指示に黙々と従っていた私も反省すべきであるのだが。

 このときの「『低下』の文字を外せ」は、実際に政治部から要請があったのか、それともネット報道部の幹部が政治部に気を遣って指示したのかは不明だ。通常、記事のタイトル付けは現場に任せられ、具体的に修正を命じるような指示が来ることはほとんどなかったので、何らかの忖度があったと考えるのが自然だ。私自身の感触では、当時のネット報道部のトップが報道局各部の幹部の顔色を気にするタイプだったので、すでに政治部の幹部で、のちに報道局長や理事まで昇進した小池英夫氏などの目を気にして修正を指示したのではないかと推測している。NHKは政治の圧力に屈しやすいなどとよく言われるが、むしろ卑屈に気を回したこうした「忖度」の方が多いのではないか。

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