増える「ぼったくり」お葬式 コロナのデマで25万円上乗せ……現役葬儀社社長が明かす業界事情

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 家族や友人など、生前交流があった人が一堂に会して故人をしのぶはずのお葬式は、家族葬の流行などで近年形を変えつつある。特にコロナ禍で、感染防止のために大人数で集まることが憚られるようになってからは、ますます縮小の傾向が強くなっているという。都内で葬儀社「佐藤葬祭」を営む佐藤信顕代表に、最近の葬儀事情について聞いた。

葬儀にまつわるデマ

 新型コロナ流行初期には、未知のウイルスに関する真偽不明の情報がネット上に溢れた。2020年3月、医師を名乗るTwitterユーザーが投稿した新型コロナの流行で死亡者が急増していることを示唆するツイートが話題になった。

〈火葬場が、いつもの2割増しくらいで忙しい、と聞きました。何故でしょうね?〉

〈これは、関係する部署に勤めていらっしゃる方から伺いました。毎日の件数が多いそうです。一ヶ所だけの話なので、全国的に同様なのかは、分かりません。もし、亡くなる方が増えているなら、原因は何でしょうね?〉

 これに対し、〈リアルにコロナデマの流れが、まるっきり放射能デマと同じ様子になってきました。死者数もふえていませんし、不審死も増えていません。火葬場の混み具合も普通です。現場の葬儀屋のおじちゃんが保証しますから安心して下さい。〉といち早く否定したのが、佐藤葬祭代表の佐藤信顕氏である。

「新型コロナが流行し始めてからは、葬儀にまつわるデマが増えました。葬儀の現場を知る者で、ネットで顔と名前を出して情報を発信する人がほとんどいないというのも、デマが増えた原因の1つではないかと思います」(佐藤氏)

 上記のツイートが投稿された当時の報道を確認すると、3月20日の都内の感染者は1日あたり11人で、死亡者は1人だった。

「その頃は死亡者が少なく、まだ我々の葬儀社で新型コロナに感染した方を担当したことがなかったほどで、当然火葬場も通常通り運用されていました」(同)

火葬まで数日待ちはあった

 他にも“ワクチン接種で多数の死亡者が出ており、都内の火葬場は数週間待ちの状態になっている”といったデマもあった。

「ワクチン接種が原因だとするのはデマですが、確かに昨年の夏ごろ、都内で死者が数十人出て医療がひっ迫していた時期には、すぐに火葬できず、数日間待たなければならない状況になったことはありました」(同)

 コロナ感染者の火葬が出来る斎場が限られていることが理由だという。

「都内では、臨海斎場、瑞江葬儀所、落合斎場、戸田葬祭場の4か所で、コロナ感染者の火葬が出来ます。さらにそれらの斎場の中でも、コロナ感染者を火葬する枠というのが限られており、1日あたり20体くらいが23区のキャパシティです。ただご遺族の中には『自宅から近い斎場が良い』といった希望を持つ方もおり、どうしても偏りが出てしまいます。そうした中で、火葬まで数日待たなければならないという状況があったのは事実です」(同)

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